廣田彰男(広田クリニック院長)
2ヶ月前のこの欄で、乳癌や子宮癌の術後に多く見られるリンパ浮腫は最近になって知られ始めてきたが、まだまだ十分ではない、と書きました。主に患者さんやマッサージ師さん、看護師さんなどが活発に動いていますが、残念ながら医師などの間ではあまり知られてはいません。
医師については日本リンパ学会がリンパ浮腫の専門のように思われますが、意外とそうでもありません。20030年前はリンパ研究会と言ってリンパ浮腫やリンパ管の機能が中心の集まりでした。ですが「リンパ」と言うと、リンパ浮腫やリンパ管だけでなく、リンパ節や免疫なども含まれますので、必然的に癌とリンパ、免疫とリンパや解剖などにも拡がり、逆にリンパ浮腫は徐々に目立たなくなってきました。
ですが、最近再び活動の一環にリンパ浮腫治療研究会という形でリンパ浮腫を取り上げるようになってきて、日本静脈学会、日本脈管学会などとも協力して、各学会総会の最終日に、リンパ浮腫治療に関する市民公開講座を開催する形で啓蒙活動を行うようになっています。今回は6月3日(土)午後、東京都大田区南蒲田の大田区産業プラザ(03”3737”0797)で開催されます。500名以上収容できる大きな会場ですので自由参加、また参加費無料です。
今回の企画には私も大いに関与させて頂いています。これまで中心的にリンパ浮腫に携わってこられた多くの先生方にご講演頂き、非常に贅沢な、そしてバランスの取れた内容と自負しております。あまり欲張って多くの先生方にお願いしたため、私の出番はなくなりました。普通ではまず聴くことのできない貴重な講演ばかりです。エコー検査によるリンパ浮腫の新しい診断法、リンパ管とタンパクや免疫との係わり合い、実際のリンパ管のビデオ画像、リンパドレナージュの異なる流派とされている方々の共同講演など、今回の講演をもっとも楽しみにしているのはおそらく私です。
ところで、私には大変魅力的なリンパなのですが、関心を持つ医師はそれほど多くはないように思われます。その理由はいくつか考えられますが、?リンパ管の状態や働きを明確な数字で表現しにくいためデータになりにくい、?癌の転移先としてのリンパ節や免疫としてのリンパ球は医学の勉強の中で出てくるが、リンパ浮腫に関係するリンパ管の機能については馴染みがない、そして?万一興味を持っても臨床的にはあまり重要視されず、また保険適応もないため途中で挫折してしまう、ということなどが考えられます。
今後リンパ浮腫の治療が日本の医療に定着するには、治療に用いる弾性スリーブ・ストッキングやリンパドレナージュはもとより、診療自体にも保険適応がなされること期待しています。