日本OTC医薬品協会顧問 西沢元仁
2015年は、日本OTC医薬品協会が発足して30年を迎える節目の年に当たっており、将来に向けた結節点として、様々な出来事が重なった。
5月には総会が行われ、業界発展のみならず、東日本大震災後の復興にも尽力された吉野俊昭会長が任期を満了され、杉本雅史氏が第12代会長に選任された。また、初代新田進治理事長の後を受けて協会の柱として尽力された鶴田康則理事長が勇退された。
この総会では、30周年を記念して30年史「OTC薬協30年の歩み」が披露され、会員ならびに関係者に贈呈された。これまでに刊行された10年史、20年史を包括する形で、取りまとめたものである。
また、今後の10年の行動計画として、25年をメドに国内・海外市場の市場拡大を目指し、国が目指す健康寿命延伸に、セルフメディケーション、セルフケアの振興を通じて貢献しようとする「グランドデザイン」が紹介された。これは、国内国外市場のこの先10年の動向を踏まえ、その中で、健康寿命延伸に寄与するための三つの柱を立て、各々の柱が建てられるべき環境整備を5ないし6項目の推進課題により明らかにしたものである。さらに、その具現化に向けた30余りの細項目を設け、官民の関係者との協力による実現を図ることとしている。
このグランドデザイン実現の一環として、日本一般用医薬品連合会ならびに日本製薬団体連合会との連携のもと、かねてから進めてきた「セルフメディケーション推進税制」は、いよいよ佳境に入っている。昨年は厚生労働省から初めて公式な要望事項とされ、最終的には15年度税制改正大綱の検討事項に組み入れられたが、今年は厚労省からの新規要望事項の一番に位置づけられ、関係者の期待が高まっている。
このような取り組みを進める上で、勇退された鶴田理事長の後任を求める声が高まっていたが、慶應義塾大学薬学部教授を務める黒川達夫氏の就任が、7月の理事会で了承され、8月からの着任を得ることができた。なお、黒川氏はさっそくセルフメディケーション推進税制の確立やWSMI(世界セルフメディケーション協会)の業務改革などに向け、活発に参加いただいている。
また、OTC薬協が他の4協会と共に参画する一般薬連は、人的・財務的基盤の強化を進め、順次日本を代表する組織としての地歩を固めつつある。例えば、従来OTC薬協が支援の主体となっていた「広告審査会」や「広告研修会」については、一般薬連がその主体として活動を進めている。今後、一般薬連が主体となることが期待される。
さらに、これまで滞っていた一般用体外診断薬や、スイッチOTC等の推進が、グランドデザインが目指す生活者ニーズへの対応として期待されている。業界では、体外診断薬やスイッチOTCの登場に呼応した安全対策の向上にも努めており、OTC版DSU(医薬品安全性情報)の発行等も開始している。
生活者の健康への関心の高まり、また政府の推進する規制緩和の流れの中で、いわゆる機能性表示食品制度が4月から動き出し、様々な商品が登場し始めている。これらについて、生活者の正しい認識、取り扱いを実現すると共に、生活者のニーズに応える要指導医薬品や一般用医薬品、あるいは指定医薬部外品の充実が求められている。これらの製品には、増大する海外からの訪日旅行者の買い物リストの上位を占めるものも少なくないことから、国内のみならず、海外の需要者にも配慮した取り組みが急がれている。
一般用医薬品製造販売承認基準については、02年のWSMI東京大会に際し、その骨子が英文で紹介されていたが、このたび国による基準の英訳が提供されるに至った。このように、日本の制度や情報が適切に提供され、日本の優れた医薬品等が海外の需要者のニーズを満たすべく供給されることを願っている。
また、伝統薬・家庭薬と呼ばれる長い歴史を持った医薬品については、近年の承認基準整備の中で、その特色が十分に承認内容に反映されていないとの声も聴く。欧州等では、長い歴史を持った薬用植物製品について、社会的な位置づけや伝統を踏まえた取り扱いが見られる。生活者の主体的選択実現が、機能性表示食品制度の一つの柱であるとするならば、そのような柱を考慮した医薬品医療機器等法の運用が期待されるところである。
生活者への啓発では、既に中学校・高等学校での学校教育の一環として「お薬教育」が盛り込まれたところである。また門前薬局是正に向け、厚労省から新たなビジョンも出されて、生活者を地域で支援する街の健康拠点として、薬局、ドラッグストアの活躍が期待されている。
生活者の健康寿命延伸に向けて、OTC薬協は生活者側に立ち、会員と共に取り組みを進めることとしている。