日本医薬品卸売業連合会専務理事 山田耕蔵

医薬品卸売業界の1年を振り返り、今後の対応の方向を考えてみたい。消費税の表示カルテル、新バーコード表示、国際関係などもご紹介したいが、紙幅の都合上、流通改善、未妥結減算、薬価の毎年改定の3項目に絞らせていただく。
流通改善
今年は、今後の流通改善を進める上で大きな動きがあった。言うまでもなく、医療用医薬品の流通改善に関する懇談会(流改懇)の「医療用医薬品の流通改善の促進について(提言)」(新提言)が今年9月に取りまとめられたことである。また、ほぼ同時に「医薬品産業強化総合戦略」が厚生労働省として策定され、流通改善に関して新提言と同様の内容が多く盛り込まれた。
新提言においては、医薬品の価値に基づく単品単価交渉のさらなる促進、後発医薬品のさらなる使用促進を踏まえた流通のあり方、市場の変化や社会的要請に対応する流通のあり方などの新たな流通改善の方向性が示されており、今後、流改懇において具体化に向けた取り組みを検討することが予定されている。
日本医薬品卸売業連合会としては、新提言等に盛り込まれた流通改善の進捗状況の検証などを行うためのタスクフォースを設置したところであり、今後の流通改善の大きな進展に向けて積極的に対応することとしている。
未妥結減算
2014年4月から導入された未妥結減算ルールも2年目を迎えた。初年度は導入の是非や効果について種々議論があったが、今年は比較的淡々と価格交渉が行われたように見えた。また、9月末の妥結率は前年の92.6%から97.1%に上昇し、単品単価取引の割合が若干増加した。
しかしながら、単品単価取引の割合は未妥結減算ルール導入前の水準に戻ったにすぎず、現場の方々からは「交渉期間が短く価格交渉がやりにくかった」「手間のかかる単品単価取引については理解を得られにくかった」「半年ごとの交渉に変わった取引先があった」など、厳しい声が聞こえてきた。なお、昨年多大の労力を費やした品目リストについては、対象医療機関などが地方厚生局から求められたときに提出できるようにしておけばよいとされ、事務負担が大幅に軽減された。
未妥結減算ルールは、薬価調査の信頼性確保という医療保険制度の根幹に関わるものである。長期未妥結の解消と共に、単品単価による取引の結果が市場実勢価格となり、薬価に反映されるべきである。今後は、未妥結減算ルール下で、単品単価取引の推進などの流通改善を同時に図っていくことが大きな課題である。
薬価の毎年改定
14年5月末に財政制度等審議会が薬価の毎年改定について取り上げ、6月には経済財政諮問会議においてこの問題について議論が行われ、骨太の方針では、「薬価調査・薬価改定のあり方について、診療報酬本体への影響にも留意しつつ、その頻度を含めて検討する」との文言で閣議決定された。今年6月の骨太の方針では、「薬価改定のあり方について、個々の医薬品の価値に見合った価格が形成される中で、先進的な創薬力を維持・強化しながら、国民負担の抑制につながるよう、診療報酬本体への影響にも留意しつつ、18(平成30)年度までの改定実績も踏まえ、その頻度を含めて検討する」とされている。
薬価の毎年改定については、医薬関係団体がこぞって強く反対しており、薬卸連としても断固反対との姿勢を堅持している。しかし、17年4月の消費税の引き上げに対応するための薬価調査が行われることになれば、事実上3年連続改定になり、骨太の方針のシナリオどおりになりかねないので、今年の医薬品業界の関心は16年に薬価調査が行われるか否かに集まった。
中央社会保険医療協議会では、毎年改定の問題も、消費税引き上げに対応するための薬価調査を実施するか否かも議論は行われなかったが、メーカー団体、薬卸連とも業界ヒアリングにおいて、毎年改定はもとより消費税引き上げに対応するための薬価調査の実施についても反対の意見を表明した。
財政制度等審議会に今年10月に提出された資料では、16年中の薬価調査の実施については「遅くとも16年央までに結論」と記載されている。個人的には、経済財政諮問会議で骨太の方針の議論が本格化する来年5~6月が勝負時になるのではないかと考えている。また、公的医療保険制度下では17年は薬価改定を行う年にはなっていないのだから、外生的な要因である消費税の引き上げに伴う措置は、薬価調査を実施しないことも含め、合目的的かつ最小限のものにすべきではないかと考えている。