時が経つのは速いもので、平成おじさんとして慕われた小渕恵三氏が「平成」を掲げてから30年という月日が流れた。実際には、元年からなので29年だが。
昨年末の12月13日、医療用医薬品の流通改善に関する懇談会に、流通改善を加速させるべく厚生労働省からガイドライン案が提示された。行政の民民取引不介入という従前からの方針を変更してまでも、国としてバックアップしなければならないほど事態は深刻だということだろう。
同月20日の中央社会保険医療協議会総会では、薬価制度の抜本改革に関する骨子が了承された。誤解を恐れずに端的に言えば、一部を除いて薬価は引き下げるというものである。抜本改革と表現しているものの、これまでの薬価引き下げ分を予算編成に充てるという財源確保の基本路線は何ら変わらない。
さすがに、日本製薬団体連合会、米国研究製薬工業協会(PhRMA)と欧州製薬団体連合会(EFPIA)は座視できず、同日に緊急声明を出した。特に、PhRMAとEFPIAの共同声明では、「大いに失望し、今後を憂慮」との厳しい表現が使われた。グローバルの視点から、日本でイノベーションを促進するインセンティブが大きく損なわれることを強調して、日本経済市場から医薬品研究開発投資の撤退もあり得るかのニュアンスも読み取れる。ここでも日本はまたガラパゴス化してしまうのか。
同じ20日、医療用医薬品の偽造品流通防止のための施策のあり方に関する検討会で最終報告案が大筋了承された。PIC/SのGDP(医薬品適正流通基準)に準拠したガイドラインを整備して、医薬品卸の自主的な取り組みを促すと共に、薬局や薬剤師の責任などは今後検討していき、罰則や許可基準などは薬機法改正に向け厚生科学審議会・医薬品医療機器制度部会で検討されることになる。
このように12月に各種の骨子、指針、報告書などが相次いで公表された。一昨年の年末には、財務相、経再相、官房長官、厚労相4大臣による薬価制度抜本改革の基本方針がまとめられ業界に衝撃が走ったことは、まだ記憶に新しい。内容が予算編成に絡めば当然であり、年末に諸課題が一気に片が付くのだが、ここ数年はその傾向が特に顕著だと感じるのは錯覚ではないと思う。官邸の強いリーダーシップと言うべきか、強引な手法と言うべきか。
否が応でも、これから薬価の毎年改定はやってくる。今後も、医薬品産業がイノベーション産業、成長産業として日本経済や国家運営を牽引していけるのかを問われる試練の年でもある。この正念場を何としてでも乗り切って、明るい未来を手中に収めてほしい。
本紙は今年も引き続き、微力ながら医薬品産業に貢献していけるよう、正確、公正、不偏不党、迅速な報道に努めていく所存である。