2017年もあと数日を残すところとなった。師走には、6年に一度となる診療報酬と介護報酬の同時改定が決着し、団塊の世代が75歳以上となる25年に向けての方向性が示された。
今年の薬局薬剤師に関する重大ニュースとしては、▽敷地内薬局問題▽健康サポート薬局の届け出数577軒(今月1日現在)▽薬剤師不在時のOTC販売改正省令施行▽ハーボニーの偽薬問題や処方箋付け替え請求など薬局の不祥事横行――が挙げられる。
敷地内薬局の誘致は規制緩和の流れとはいえ、国が推進する「かかりつけ薬剤師」の施策と全く相反している。医療機関からの薬局の独立性担保が揺らげば、医薬分業そのものの崩壊につながりかねない。これまで、全国的に地域の薬剤師会が地方自治体等に反対要望書を提出する動きが目立ったが、日本薬剤師会がリードして各ブロックが呼応する形を取れば、もっと訴求力は高まるだろう。
健康サポート薬局の登録数については、少数感が否めない。その主な要因として、薬局側の「25年に向けての施策なので今急いでもメリットがない」という考えと、都道府県側の「自治体ごとに異なる登録基準の温度差」を指摘する声も少なくない。
とはいえ、従来のように最初から保険点数ありきの薬剤師業務は皆無で、健康サポート薬局はまず、薬剤師側から始めて実績を残すのが保険点数化の筋道になると考えられる。
「薬剤師不在時の対応」の風穴は、今後の薬剤師職能に大きく影響する可能性もあるので、注視していく必要があるだろう。
また、チェーン薬局の不祥事や利益主義による“社会の悪印象”は、今回の調剤報酬改定全体で見れば影響が少なかった。だが、これらの不祥事により備蓄分譲面で厳格なルール変更が余儀なくされ、きちんとしている薬局、ひいては患者にデメリットを及ぼす可能性は否定できない。今後はこれらの事態を重く捉え、不祥事防止に尽力せねばなるまい。
今年の出来事を契機に、薬局・薬剤師には、「地域住民の保健・医療を支える使命を重く受けとめ、その役割を全うする」強い思いを再認識してほしい。
翻って、製薬産業分野のトピックスは、薬価制度抜本的改革の話題に尽きるだろう。既存ルールによる薬価の引き下げ幅1.36%に加え、「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」の見直し、長期収載品の薬価引き下げ、費用対効果評価の試行的導入など、製薬企業にとっては厳しい内容となった。
新薬創出等加算については、従来の平均乖離率要件を撤廃し、医薬品そのものの革新性・有用性のある薬剤に限定するなど、抜本的な見直しが行われる。かなり柔軟に新薬の価値が評価されそうであるが、新ルールの導入により、革新的な新薬に的確に加算が付くことを期待したい。
わが国において、薬価制度と医療制度の維持は表裏一体で、国民にとってはどちらもなくてはならないものだ。
その中で、製薬産業が国の基幹産業としての位置づけにあるならば、新薬研究開発意欲を削ぐことのないよう、限られたパイを産業育成のために有効に分配することも忘れてはならない。師走の診療報酬改定を糧に、医療制度と薬価制度維持の適切な分水嶺越えを望みたい。