ベンチャー企業の支援策を検討してきた経済産業省の研究会は、最終報告書で大学発ベンチャーを取り上げた。「経営・財務面の人材不足、資金不足、販路開拓の難しさ」が課題と指摘。特に資金については、ベンチャーキャピタルからの投資額が少額にとどまっていることから、現在は認められていない国立大学法人による大学発ベンチャーへの出資解禁について検討を求めた。また販路開拓については、大学名をブランドとして活用することを提案した。
新興株式市場の上場環境の悪化など創業環境が懸念されていることなどを受け、「ベンチャー企業の創出・成長に関する研究会」(委員長:松田修一・早稲田大学ビジネススクール教授)が昨年9月から検討を始め、先月末に報告書を公表した。
それによると、大学発ベンチャーは06年度で1590社で、01年度からの5年間で2.7倍となった。東京や大阪の周辺(都市圏)以外の「地方圏」での設立が819社と都市圏を上回り、地方圏のベンチャーは5年間で3.2倍と設立は活発化してきている。
しかし同省の調べから、▽経営・財務に詳しい人材に乏しい▽新規性の高い基礎成果をベースにした企業のため事業化までリスクが高い””が弱点となっていると指摘した。そのため、事業化までの間を乗り切る人材、資金の確保を主な課題に挙げた。
人材面では、大学OB組織からの人材確保に加え、他大学や企業、自治体との連携を強化することが重要だとし、対応を促している。
資金面については、事業化しようとしている技術が先端的で新規性も高いことから、通常のベンチャー企業よりもリスク評価が難しい場合が多いと指摘。一方で、大学側には研究開発成果の社会還元が求められていることから、一例として国立大学法人による大学発ベンチャーへの「出資の解禁についても検討を行うことが適当である」と提案。さらに「ビジネスプランや事業価値の評価、各種リスク管理など、大学として出資を適切に判断・実行できるような環境整備も併せて検討する必要がある」とした。
そのほか、雇用など地域の活性化にも結びつくことが考えられることから、「大学と自治体及び金融機関を含む地元経済界が一体となって効果的・効率的に取り組むことが重要」と、地域による支援も打ち出した。
販路開拓にも言及し、ターゲットとする市場の開拓を含め容易ではないとし、「顧客が実績や知名度を優先する傾向が強いわが国では、販路の確保をさらに困難なものにしている」と問題点を挙げた。
その上で、大学名が一定の価値を有するとして、顧客や市場の信用力を高めるため自社の製品名に大学の名称を活用することを提案。大学としても利用を許諾することで収入が得られる可能性もあるとした。
経産省は「とりまとめられた政策課題への対応に向けて努力したい」としている。
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