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未来担う子供の薬に注力を

2018年09月21日 (金)

 小児用医薬品の開発に世界が手を組んで取り組もうという動きが出てきている。かねて子供に投与する医薬品は、用法・用量、有効性・安全性が十分確立されていないにもかかわらず、日常的に適応外使用を行わざるを得ないことが大きな問題となってきた。常に危険にさらされながら、子供たちに医薬品が投与されている状況に危機感を感じた関係者の努力もあり、厚生労働省の未承認薬等検討会を通じて多くの小児適応の取得が実現した。

 それでも薬の苦みや飲みにくさなどを解消したような最適な剤形が存在せず、子供に医薬品を投与する際の問題を解決する必要があった。これまで剤形開発に向けた取り組みが医療機関、製薬企業、研究者によって試みられてきたものの、子供を対象とした治験という高いハードルが立ちはだかり、なかなか進んでいなかったのが現状だった。

 これに対して欧州では、小児用医薬品の開発計画が義務化されており、産官学が連携したコンソーシアムの活動も進められてきている。こうした中、日本も参画してグローバルに課題解決を目指そうという動きが出てきた。アカデミアからこうした流れが出てきたのは注目すべきことと言える。

 また、臨床現場で子供に医薬品を投与するに当たっては薬剤師が果たす役割が大きい。当然、服薬指導の方法も成人向け医薬品とは異なる。特に製剤量と成分量の間違いを起こさないために体重を測定するなど、きめ細かいチェックが必須となる。母親に医薬品の説明、吸入器具の使い方、調剤内容を詳細に説明するだけでなく、年齢に応じて子供にも薬を理解してもらわなければならない。つまり、小児用医薬品の開発から実際の使用、投薬後のフォローまで、創薬、製剤研究者や医療機関、薬局の薬剤師などが一体となって子供たちを救う取り組みが求められている。

 最近の話題は、いかに超高齢化社会を乗り切るかという「2025年問題」が中心。しかし、病に苦しむ子供たちを救うことは、国の未来を作ることに直結する。既に社会保障は全世代型への転換が叫ばれ、高齢者数がピークを迎える25年問題への対応はほぼ終えたとされている。厚労省トップの鈴木俊彦事務次官も40年に向けた社会保障の絵柄について国民的な議論をしていきたいとの考えを明言。大きな枠組みでは本格的な人口減少時代への対応が中心的な政策課題に位置づけられる中、国の未来を担う子供の病気の克服は待ったなしの課題と言っていいだろう。

 折しも新薬開発のトレンドが難病、希少疾患にシフトし、さらにハードルが高まっているが、特に治療法がない子供の病気に光明となる新薬の登場は、命を救うと共にその後何十年も続く未来の人生を切り拓く価値がある。画期的な新薬の開発にとどまらず、子供たちが飲みやすい剤形開発、臨床現場での適切な服薬指導と、全ての場面で関わる人たちがもっと小児用医薬品への取り組みに注力してもらうよう期待したい。



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