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アジアの進行非小細胞肺癌患者を対象とした大規模臨床試験「IPASS」のサブグループ解析の結果、EGFR変異がある患者の無増悪生存期間は、化学療法群に比べイレッサ群で有意に長いことが明らかになった。既にIPASS試験では、イレッサの無増悪生存期間の優越性が証明されているが、さらに有効性の高い患者が初めて明確になった格好だ。成績は、ストックホルムで開かれた欧州臨床腫瘍学会で発表された。この結果を受け、アストラゼネカは一次治療としての使用に向け、厚生労働省と協議を進めていくとしている。
IPASS試験は、化学療法治療歴のないアジアの進行非小細胞癌患者で、腺癌、非喫煙の1217例(日本人233例)を対象に、一次治療としてのイレッサの有効性・安全性・忍容性をカルボプラチン+パクリタキセル併用化学療法と比較した大規模臨床試験。既にIPASS試験の速報結果では、主要評価項目に設定した無増悪生存期間の非劣性を上回る優越性が証明されている。
今回、サブグループ解析の結果が発表され、EGFR変異がある患者の無増悪生存期間は、化学療法群に比べ、イレッサ群で有意に長いことが示された。これに対し、EGFR変異のない患者の無増悪生存期間は、イレッサ群に比べ化学療法群の方が長かった。
副次評価項目に設定された奏効率は、イレッサ群が43%、化学療法群が32%と優越性が示され、QOLについても、イレッサ群48%、化学療法群33%と有意に多くの患者で改善が認められた。全生存期間については現在観察中で、引き続き追跡調査を行っていくとしている。
また、安全性と忍容性に関しては、化学療法群に比べ良好な結果が得られ、分子標的薬の特徴が明確に示された格好となった。
現在、厚労省は、イレッサの国内第III相試験の結果から、「ドセタキセルに優先して投与を積極的に選択する根拠はない」との見解を示している。IPASS試験の結果を受け、同社は「イレッサのデータは出揃った」としており、今後一次治療としての使用に向けて厚労省と協議を進めていく。また、アジア各国においても、イレッサの一次治療としての使用を加速させたい考えだ。
一方、肺癌専門医の間では、今回発表されたIPASS試験の成績が「予想以上の結果」と捉えられており、現場レベルでは今後、日本肺癌学会の「ゲフィチニブ使用に関するガイドライン」の再改訂に向けた動きが加速する可能性がある。
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