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増原薬剤部長
聖マリアンナ医科大学病院は、ヤマトのジェネリック医薬品(GE薬)流通システムを導入し、GEメーカーとの直接取引を開始した。薬剤部長の増原慶壮氏は、本紙の取材に「ヤマトのシステム導入は特別なことではない。流通コストを減らし、より安くて良質な薬物治療を提供するのは薬剤師として当然の役割だ」との考えを強調した。その上で、GEメーカーの取り組みにも言及。「自ら販路を開拓し、国民に良質なGE薬を普及させるために貢献してほしい」と求めた。
同院は2003年、DPC導入に伴い、GE薬への切り替えを開始。翌年には一般名処方に踏み切った。増原氏は「GE薬の使用は日本の医療を大きく変える改革だ」とし、「ヤマトの直接取引システムを活用することにしたのも、GE薬を使い始めた流れの一環であって、特別なことではない」と強調する。
その上で、「安くて良質な薬物治療を提供することは薬剤師の役割であり、今回のシステムを活用して、GE薬の流通コストを減らそうと考えるのは当たり前のこと」とし、「薬剤師がGE薬を使って安くて良質な薬物治療を提供することは、ファーマシューティカルケアの実践に力を発揮できるチャンスだ」と訴える。
GE薬の流通にヤマトの直接取引システムを導入したのも、世界の薬剤師が実践しているファーマシューティカルケアに立脚した考え方の延長線上にあり、増原氏は「決して直接取引によって医薬品流通を改革しようというものではない」と話す。
ただ、直接取引システムには、緊急時対応の課題も指摘されている。増原氏は、「早急に解決しなければならない問題」との認識を示し、「急配に対応できるビジョンはできた。あとは実行するのみ」と迅速に対応する考えを示した。緊急時対応の解決には、市場の広がりも大きなカギを握る。今後システムを導入するGEメーカーが増えるかに注目が集まる。
今回のヤマトのシステムは、小さな地方の薬局でも当日の午前中に発注すれば、翌日には届くというメリットがある。包装変更などの情報は、ヤマトが配送と同時に提供することで解決できる。
増原氏は「これまで小さな薬局は、卸と取引してもらえないことが多かったが、ヤマトは小取引でも現金回収を行ってくれるので、地域に根ざして頑張っている薬局などにはメリットが大きい」と話している。
一方、GE薬メーカーに対しても注文を付ける。7月にGE薬が発売されたアムロジピンの売上高上位は先発メーカーのGE薬が独占した。こうした状況を増原氏は危惧し、「今後GEメーカーは自分たちで販路を作っていかない限り、先発メーカーのGE薬に販売力で負けてしまう」と指摘。「自ら販路を開拓し、生き残れる体制を作ることは国民に安く良質なGE薬を提供することにもつながる」と求めた。その意味で、ヤマトの直接取引システム活用がGE薬メーカーの販路を開拓する一つのキッカケになるのではないかと期待感を示している。
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