河合忠(国際臨床病理センター所長・自治医科大学名誉教授)
医療の質を担保するために医療職種や医療・介護施設などの国家認定が行われているが、近年、民間団体によるさまざまな職種の人材、施設の認定/認証制度が急速に広がっている。それ自体は、医療サービスを受ける患者側にとっては一つの判断材料として役立つことは間違いないであろう。
問題は、「それらの認定制度がどこまで信用できるか」である。ほとんどは仲間同士での審査が中心であり、第三者による参画が必ずしも充分ではない。日本人は仲間同士の審査に甘い傾向が指摘する向きもあり、どの分野でも推薦書への信頼が低いように思われる。
筆者は、国際標準化機関(ISO)が発行した国際規格、「ISO 15189:2003、臨床検査室”品質と能力に対する特定要求事項」に基づいて臨床検査室認定(accreditation)プログラムを日本において2005年8月からスタートするプロジェクトの委員長を務める機会に恵まれた。
ISO国際規格による認定事業は、ISO/CASCO(適合性評価委員会)が定めた枠組みの中で、第三者機関が中心になって公正に行われる。しかも、認定機関の保持すべき要件も厳密に定め、世界中の認定機関で構成される国際試験所認定協力機構(ILAC)が認定作業の高いレベルを相互に維持する努力をしている。一定の水準をクリアしている認定機関同士で相互承認協定(MRA)を結んで、相互に認定された臨床検査室を認め合っている。
このMRAをILACという民間レベルに留まらず、国家レベルまで高めようとの動きもある。最終的には、臨床検査室の技術能力とサービスの質についてのグローバリゼーションを目指している。産業界では、ISO国際規格が商取引の上で大きな影響を持つために、経済産業省の積極的な指導と支援もあって、ISOの認定の枠組みが普及してきているが、医療界で注目され始めたのは最近5年ほどである。医療のグローバリゼーションを推進する立場から、厚生労働省ならびに医療界のISO規格に対するより一層の理解が望まれるところである。