新型コロナの初期治療に使う抗体薬に緊急使用許可、米FDA

2020年11月25日 (水)

この記事は2020年11月25日に配信された記事です。
配信日から2年以上経過している為、最新情報ではない可能性があります。

 米食品医薬品局(FDA)は11月9日、イーライリリー社の抗体治療薬バムラニビマブ(bamlanivimab)に対し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への緊急使用許可を与えたと発表した。

 FDAの声明によると、バムラニビマブは重症化リスクの高いCOVID-19患者への単独療法として承認された。本剤の投与対象となるのは、高齢(65歳以上)、肥満(BMI 35以上)、糖尿病や慢性腎臓病などの慢性疾患といった重症化リスク要因があり、12歳以上で体重40kg以上の軽症~中等症のCOVID-19患者だ。

 本剤は症状発現から10日以内に、ウイルス検査で陽性反応が出たら可及的速やかに投与すべきとされている。既にCOVID-19で入院している患者に対する効果は認められておらず、酸素投与や人工呼吸器を要する患者に対して本剤を始めとするモノクローナル抗体薬を投与した場合、臨床転帰を悪化させる可能性もあるとFDAは警告している。

 今回の緊急使用許可は、軽症から中等症のCOVID-19成人患者465人を対象とした第2相二重盲検ランダム化臨床試験の中間解析結果に基づくものだ。対象患者は入院していないものの重症化リスクが高く、陽性判明後3日以内にバムラニビマブまたはプラセボ(偽薬)のいずれかを投与された。その結果、バムラニビマブ群では設定用量にかかわらず、治療後28日間のCOVID-19による入院または救急受診率が平均3%であり、プラセボ群の平均10%に比較して低いという結果が認められた。

 ただし、緊急使用許可は通常の承認とは異なり、緊急事態での使用にあたって考え得るリスクとベネフィットを秤にかけてFDAが発行したものだ。「本剤は軽症から中等症のCOVID-19患者に対して有効と判断され、パンデミックの最前線にいる医療従事者に新たな治療選択肢を提供する。しかし、安全性と有効性の評価はこれからも続けていく」と、FDA医薬品評価研究センターのPatrizia Cavazzoni氏は説明している。

 抗体とは、ウイルスなどの体内に侵入した異物(抗原)を排除するために免疫系が作り出すタンパク質の一種。FDAによると、バムラニビマブは新型コロナウイルス表面のスパイクタンパク質に結合する抗体を、研究室で大量複製したモノクローナル抗体薬だ。この人為的につくられた抗体はウイルスに結合し、ヒト細胞内への侵入を防ぐ働きをするという。

 イーライリリー社は10月28日、米国政府と3億7500万ドル(約389億円)の契約で本剤30万回分を供給すると発表しており、年内には100万回分の供給体制を整えられるとしていた。今回の緊急使用許可を受け、同社は11月9日、全米に展開する医薬品卸AmerisourceBergen社が販売代理店として本剤の配送を直ちに開始すると発表した。米国人患者は自己負担無しで本剤を使用できるという。(HealthDay News 2020年11月10日)

Source
https://consumer.healthday.com/new-antibody-treatment-approved-for-emergency-use-against-early-covid-19-2648848293.html

(参考情報)
Press Release
https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/coronavirus-covid-19-update-fda-authorizes-monoclonal-antibody-treatment-covid-19


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