米食品医薬品局(FDA)は2020年12月18日、経口ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)受容体拮抗薬のOrgovyx(オルゴリクス、一般名レルゴリクス)について、進行性前立腺がんを適応症として承認したことを発表した。同薬剤は、進行性前立腺がんを適応症として米国で承認された、初めての経口GnRH受容体拮抗薬である。
米国がん協会は、2020年の米国の前立腺がん罹患者数を19万人以上と見積もっている。進行性前立腺がんに対する治療法としては、アンドロゲン除去療法がある。これは、前立腺がんの増殖に欠かせないアンドロゲン(男性ホルモン)の活性レベルを下げることで治療効果を期待する治療法である。アンドロゲン除去療法として現在FDAが承認している治療は、皮下注射または薬剤の体内への埋め込みにより行うものである。これに対して、Orgovyxは経口投与が可能であり、テストステロンの分泌量を調整する下垂体の黄体形成ホルモンおよび卵胞刺激ホルモンの産生を阻害することで、テストステロンの産生量を減らすことを狙うものである。
Orgovyxの有効性と安全性は、進行性前立腺がん患者を対象にした、第3相オープンラベルランダム化比較試験で確認された。同試験では、対象者を48週間にわたり、Orgovyx 120mg(1回目のみ360mg)を1日1回経口投与する群と、GnRH受容体作動薬のリュープロレリン22.5mg(日本と台湾では11.25mg)を3カ月ごとに皮下注射する群にランダムに割り付けた。その結果、薬剤投与開始後29日目から治療終了時までテストステロンが精巣を除去した場合のレベル(<50ng/dL)に達した人の割合は、Orgovyx投与群で96.7%であったのに対し、リュープロレリン投与群では88.8%であった。
最もよく報告されているOrgovyxの副作用は、ほてり、血糖値の上昇、トリグリセライド値の上昇、筋骨格痛、ヘモグロビン値の低下、倦怠感、便秘、下痢、および特定の肝酵素値の上昇である。このほかFDAは、他のアンドロゲン除去療法と同様に、Orgovyxが心臓の電気的特性に影響を与えたり、電解質の異常を引き起こしたりする可能性があることを指摘。医療提供者に、心電図と電解質の定期的な監視を検討するよう求めている。
さらに動物実験の結果、および同薬剤の作用機序から、妊娠中のOrgovyx投与は胎児に有害な影響を及ぼし、流産や死産を招く恐れがあることも示唆されている。そのため、妊娠の可能性がある女性をパートナーに持つ男性は、同薬剤による治療中および治療後2週間は確実な避妊手段を用いるべきことが推奨されている。
なお、Orgovyxの承認は、Myovant Sciences社に対して与えられた。同社は声明の中で、Orgovyxが2021年1月に利用可能になる予定であるとしている。(HealthDay News 2020年12月21日)
More Information
https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-approves-first-oral-hormone-therapy-treating-advanced-prostate-cancer