2008年は激動の1年だった。
米国の金融不安に端を発した景気の減退、そして経済崩壊の嵐が世界に吹き荒れた。日本も例外ではなく、急激な円高により、特に輸出に頼っていた製造業の業績悪化は度を超した。日本の誇る優良巨大企業であるトヨタが、営業損失に転じるとの業績下方修正は、世界のメディアでトップ事項として取り上げられた。医薬品業界でも動きは激しかった。大きな話題を振り返る。
制度的には、診療報酬・調剤報酬が8年ぶりに引き上げられた一方で、薬価基準は5・2%引き下げられた。薬価制度の改革案議論も本格化しているが、調剤報酬、新薬価制度とも、ジェネリック医薬品の使用促進が隠れたキーだとも言えるだろう。
OTC薬の関係では、来年6月から開始される新販売制度に向け、初めての登録販売者試験が実施された。多少の混乱はあったものの、一気に4万人のOTC薬を担う新たな専門家を誕生させたことは評価される。
販売制度に関しては、年末にかけてインターネットを含む通信販売の可否について、薬業界と通販・規制改革側で意見の攻防が繰り広げられたが、結局この決着は越年となった。
今年も業界の再編が進んだ。メーカーや卸に加え、大手調剤薬局チェーンと大手ドラッグストアなどの提携も活発に行われた。経営上の問題のほか、制度改正や環境の変化に適切・迅速に対応することが目的だが、従来では考えられなかった企業同士、業種の壁を越えた合併や提携が興味深く、各分野での企業戦略転換を如実に示す好例だ。特に、医薬品卸では、それまでライバルだったトップと2位が経営統合し、年商4兆円を超えるアルフレッサ・メディパルHDが出現する方向で動いている。
その医薬品卸が主体性を発揮し、製薬企業から医療機関までも巻き込んで取り組んだのが、医療用医薬品の流通改善だ。薬卸での課題とされた未妥結、総価取引、売差マイナスについては、9月末現在、妥結率7割、全品総価契約の低下などで一定の評価は得られたが、なお努力が必要だとも指摘されている。来年3月には大きな成果が見られることを期待したい。
日本の科学レベル低迷が叫ばれて久しいが、そんな空気を一掃する吉報が北欧から届いた。物理学の3氏と共に、下村脩氏が08年ノーベル化学賞を受賞した。しかも、初めての薬学出身者と聞いては嬉しさも倍増で、今年最も輝いたニュースだった。基礎と理論、応用に関する研究で、日本はまだまだ強いということを世界に知らしめたことは、後に続く日本の研究者たちに大きな勇気と希望を与えたに違いない。
来年度予算と並行して行われていた政府の税財政抜本改革「中期プログラム」は、消費税アップに関する文言を調整していた与党がやっと妥協点を見つけ、24日に閣議決定された。3年以内の経済状況好転を前提として、11年度に消費税率アップなどの税制抜本改革を行うというものだ。選挙対策とはいえ、このゴタゴタはかえって国民に悪印象を与えたのではなかろうか。
09年、社会保障の財源確保問題も関連し、医薬品業界をめぐる制度や業界の動向は、今年にも増して険しくなることが容易に想定できる。新年早々にもやってくる、未曾有の荒波を乗り越えるため,しっかりとした心構えと、万全の準備が必要だ。