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【2009年年頭所感】正念場迎えた流通改革を完遂‐日本医薬品卸業連合会

2009年01月06日 (火)

日本医薬品卸業連合会 会長 松谷 高顕

 松谷 高顕氏

 佳き新年をお迎えのことと、お慶び申し上げます。旧年中、皆様からいただきましたご支援ご指導に対し、心より厚く御礼申し上げます。年頭に当たり所感の一端を述べさせていただきます。

 顧みますと昨年の卸業界は、一昨年9月の流改懇「緊急提言」の実現に向けて総力を挙げて流通改革に取り組んだ1年でした。また、厚労省との官民対話、大衆薬版JGSPの策定、新型インフルエンザ対策ガイドラインの作成、各種セミナーの開催やIFPWダブリン総会への参加など、活発な卸連活動が展開されました。

 特に、医療用医薬品の流通改革では、未妥結・仮納入の解消、総価取引の是正、そして一次売差の確保のため、卸業界は不退転の決意をもって医療機関等との交渉を進めました。その結果、昨年9月時点の妥結率が70%を超え、また、全品総価取引の除外品目の設定など、総価取引の是正にも前進が見られました。しかし、価格交渉を急ぐあまり取引先の要望に沿う形の妥結や、一部、市場シェアの拡大に走った状況が見られたことに憂慮の念を覚えます。交渉の結果とはいえ、薬価差拡大の商いからは何の実りも得られません。

 昨年7月、中医協では、日薬連提案の薬価維持特例制度の議論が始まりました。この新制度が前提とする新薬の価値が、正当に評価されるためには、単品単価取引が必要であり、精確な平均乖離率が算定されるためには未妥結・仮納入が解消されなければなりません。つまり、新制度案は流通改革と表裏一体の関係にあります。卸業界としては、ドラッグラグの解消、医薬品メーカーの研究開発能力の向上等を図る上で、新制度の成立が必要であると考え、日薬連と共同歩調を取りたいと考えますが、同時に流通改革のための一層の理解と支援を呼びかけたいと思います。メーカーのMRの方々には、医療機関等に対して医薬品の価値に見合った価格の実現のために、製品内容の的確な伝達と共に、卸MSと手を携えて総価取引の是正、単品単価取引の拡充にご協力をいただければと思います。

 流改懇の三村座長代理は、「公的保険制度下での医療用医薬品取引には、市場原理主義的な取引は絶対馴染まない」と話されました。医療用医薬品の取引は、一定のルールの下、フェアプレイの精神で取り組んでいかなければなりません。適正なビジネスを通して適正な利益を得るために、われわれは、公平な競争とは何かについて改めて考えていくべきではないでしょうか。決算が赤字になったり、大幅に下方修正されるような事態については、卸自身強く反省し、正しい道をきちんと歩んでいく姿勢を整える必要があると思います。

 また、緊急提言実現の取り組みに当たり、厚労省経済課のエネルギッシュなご活動ご指導が大変大きな力となりました。今後とも厚労省経済課の格段のご支援をいただけるよう卸業界としての活動を充実してまいりたいと考えます。

 流通改革は正念場を迎えています。卸業界の鼎の軽重を問われます。流通改革を完遂することによってのみ卸業界の真の繁栄が得られると考え、年頭に当たり決意を新たにしている次第です。

 卸企業は医薬品の安定供給を継続する社会的責任を常に求められています。昨年は、新型インフルエンザのパンデミック時(世界的大流行時)における医療体制を支えるため、「新型インフルエンザ対策ガイドライン」を作成し、各県卸組合(協会)、卸各企業に対しセミナー等で周知徹底を図りました。同ガイドラインは、医薬品の流通実態を踏まえて作成しましたが、今後の情勢変化に応じて適宜見直すべきと考えます。

 大衆薬につきましては、本年6月施行の改正薬事法により、一般用医薬品についてリスクに応じた販売体制の法的整備が図られ、登録販売者によって、多くの医薬品が販売できるようになります。新制度下での販売活動には、製配販がしっかり連携をとる必要があります。法改正を契機に大衆薬市場の活性化を図っていくために、卸としての役割を十全に果たすよう努めなければなりません。

 昨年9月のIFPW(国際医薬品卸連盟)ダブリン総会では、メーカーと卸の間のコミュニケーションをいかに高めるかがテーマとなりました。薬局に対するメーカーの直接価格交渉やメーカーによる卸の絞り込みなど、新しいビジネスモデルの出現によって、メーカーと卸の関係に変化が生じております。「卸は友人か、敵か」というタイトルで講演をしたメーカーのスピーカーもいました。翻って日本を見ると、わが国のサプライチェーンは効率性、安全性のいずれにおいても、世界に冠たる水準にあると痛感しました。このことをメーカー、卸、そしてユーザーである医療機関や薬局が共通に認識すると共に、一層の充実を図る必要があるのではないかと思います。

 本年9月には、第2回日韓医薬品流通フォーラムが日本で開催されます。日本の長所を範としつつ、力強い発展を遂げている韓国の医薬品流通が、どのように進化しているか興味深いものがあります。

 少子・高齢化社会の進展に伴い、医療費財源の確保が大きな政治課題となっており、私どもの業界を取り巻く 環境は一段とその厳しさを増しております。本年も全力で山積する課題に取り組む所存でありますので、旧年に増しますご支援をお願い申し上げます。

 最後になりましたが、本年の皆様のご健勝とご活躍をお祈り申し上げまして、私のご挨拶と致します。



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