バイエル・シエーリング・ファーマは、浜松ホトニクスが開発した癌イメージングのPET用トレーサーについてライセンス契約を締結し、全世界における研究開発、製品化の独占権を取得した。癌細胞の増殖に必要な低分子有機化合物の構造を変更し、癌細胞に選択的に取り込まれるようにしたもの。その化合物を放射性核種で標識することでPET用トレーサーとして使用できる。従来のトレーサーに比べ、正常細胞と癌細胞のコントラストが高いことから、高精度の診断が可能になる。
PETによる癌診断としては現在、増殖速度が速い細胞に多く取り込まれるデオキシグルコース(FDG)を放射性フッ素で標識して投与し、PETで画像化することによって、癌細胞の有無や場所、大きさなどを推定する手法が一般的に用いられている。
ただ、この手法では、癌細胞だけでなく、増殖細胞、代謝が活発な細胞、炎症部位も検出されるため、癌細胞と正常細胞の鑑別には限界があった。
今回、両社が契約した化合物は、癌細胞に選択的に取り込まれ、正常な細胞には取り込まれにくい。放射性核種で標識しPET用トレーサーとして用いれば、癌細胞だけを特異的に画像化できる可能性があり、正確な鑑別や病期判定、癌治療の有効性の早期判定が実現すると期待されている。
取得に要した金額は非公表、実用化のメドは未定。
バイエル・シエーリング・ファーマは現在、神経変性疾患、癌、循環器疾患の各領域を中心に分子イメージングの研究開発に取り組んでいる。今回の契約もその一環。