厚生労働省医政局経済課の木下賢志課長は20日、都内で開かれた医薬品企業法務研究会月例会で講演し、新薬価制度改革論議をめぐって「まだ議論が不十分で、これから熟度を高めていかなければならない」とした上で、「薬剤経済学的な中長期的シミュレーションによって、価格を付けるところまでいってない」と指摘。今後、中央社会保険医療協議会において、薬剤経済学的な視点を加味した議論が必要との認識を示した。
木下氏は、日本製薬団体連合会が提案している薬価維持特例を柱とした薬価制度改革案に対し、改めて理解を示した上で、「薬価が高くなる分、患者負担とのバランスを考えていかなければならない」と強調。将来的に見た医療経済的な患者メリットを、具体的に検証していくことが重要とした。
その上で、現行の薬価制度改革論議に関して、「どれだけ開発コストがかかったか、将来的な売上高はどのぐらいかという中長期的な薬剤経済学的シミュレーションをした上で、価格をつけるところまでいっていない」と課題を指摘。薬剤経済学を活用した薬価の合理的設定は、単なる価格にとどまらず、国内市場の魅力度を高められるかどうかの指標になるとし、「中医協の議論でも、そういう(薬剤経済学的な)視点が入ってくればと期待している」と述べた。
また、薬価維持特例の前提となる流通改善についても触れ、「医薬品卸が値引きをすると、値崩れを起こして薬価維持特例が適用できない。現在の既収載品を含め、薬価差を拡大しないようにできるのか」と薬価差の拡大に危惧を表明。「製薬企業自身が医薬品の価値をどこまでユーザーに伝えていけるかが大きなカギになる。そこを対応できなければ、薬価維持特例の適用はオーファンドラッグなどに限られてしまう」とした。