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薬の過剰摂取問題を看過するな

2022年03月11日 (金)

 医療用医薬品の新しい薬価基準が4日、官報告示された。ここでは薬価、つまり薬の公定価格がいくらになったのかに焦点が当たる。薬を開発・製造するには相当なコストが必要であり、当然ながら製薬企業としては薬価がいくらに設定されるかは非常に重要な問題である。

 薬価改定は、メーカーに限らず、販売納入する医薬品卸、購入する医療機関や薬局など、医療用医薬品に関連する全ての業態に影響を及ぼすので、注目されるのは当然である。医療保険一部負担を支払う患者も無関係ではない。

 価格から目を転じれば、医薬品は体や精神に作用するものであることから、明確な効能効果が求められる半面、副作用をはじめとした各種リスクも同時に存在している。リスクを最小限に止めるためにも、正しい用法用量を確実に守ることが必要である。

 違法薬物乱用も世界的に大きな問題となっている。日本での薬物乱用を取り締まる法規制としては、大麻取締法、覚醒剤取締法、麻薬(コカイン、MDMA、LSD)及び向精神薬取締法、あへん法のほか、危険ドラッグ・指定薬物は医薬品医療機器等法、シンナーなどは毒物及び劇物取締法で、輸入・輸出、製造、栽培、譲渡・譲受、所持、使用を規制、禁止している。

 法規制以外にも厚生労働省は毎年、薬物乱用防止キャンペーンとして不正大麻・けし撲滅運動、「ダメ。ゼッタイ。」普及運動、麻薬・覚醒剤・大麻乱用防止運動を実施しているほか、様々な世代に向けた啓発読本の作成・配布も行っている。

 しかし、これらは法規制されている違法薬物等に対する乱用防止啓発活動であり、正規の医療用医薬品やOTC医薬品の乱用を対象とはしていない。最近、各種報道で頻繁に取り上げられているのが、睡眠薬等の処方薬やかぜ薬など市販薬の過剰摂取、いわゆる「オーバードーズ」(overdose/OD)の問題だ。特に精神的に追い詰められている若い世代において深刻さを増しているという。

 この問題を増長させているのがSNSであるとされる。OD関連をSNSにアップすると、同じような不安を持っている人々の間に共感を呼んで一気に広がる。滋賀県で昨年12月に発生した女子高生死亡事件も、SNSで知り合ったOD仲間だと伝えられている。

 医薬品は、医療用OTC問わず、規定された用法用量を守ってこそ、効能効果を発揮できる。ODをする人たちは、大量摂取によって得られる多幸感を求めているようだが、医薬品は前述のようにリスクもあり、過剰な摂取は健康に甚大な影響を与える危険性がある。実際に死亡事例も起きている。

 違法薬物の乱用防止だけでなく、正規医薬品の適正使用についても早期に啓発していかなければ、さらに拡大して手遅れの事態になるのではないか。対策を急ぐべきだ。



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