今月21日、年初からの新型コロナウイルスの変異株であるオミクロン株の感染急拡大に伴い、適用されていたまん延防止等重点措置が全ての都道府県で解除された。このオミクロン株による第6波のピークは過ぎたと見られるが、感染者数の減少のスピードは昨年の第5波に比べて緩やかな状況のようだ。専門家の中には「第7波は思ったより早く来る」と指摘する声もある。
現在、ワクチンの追加接種が実施されているが、1年間に3度も感染症対策としてワクチンを接種することは、多くの人にとって初めての経験でもある。それだけにコロナウイルスが収束していない現状で、ワクチンの継続接種がどの程度の感染や重症化予防効果があるのか気になるところだ。
一方、コロナ治療薬の登場には大きな期待がかかる。現時点で国内承認済み薬剤は8成分あるが、多くは特例承認によるものだ。直近では、経口治療薬として昨年末に「ラゲブリオカプセル」、そして2月上旬には「パキロビッドパック」が特例承認された。
両剤共に、国際共同臨床試験で入院や死亡の割合を有意に減少させるなどの効果が示されているが、ラゲブリオは動物実験で催奇形性が認められ、妊婦などには投与できない。パキロビッドには併用禁忌の薬剤が多数あることから、投薬には細心の注意が必要になる。
また、共に安定供給が難しいことから、一般流通は行われておらず、厚生労働省が買い上げ、配分対象医療機関や薬局に無償譲渡するという通常とは異なる特殊な提供体制が敷かれている。現段階ではコロナ感染・発症者が治療薬に気軽にアクセスできる環境にはほど遠い。
こうした中、日本東洋医学会が2020年からスタートさせた新型コロナウイルス感染症に対する漢方薬の治療効果を検討する学会主導研究に注目したい。
同学会では、漢方薬を予防や治療、重症化の抑制、回復期、遷延症状、後遺症対策など複数側面での活用を考えた臨床研究に取り組み、現在、予防研究1件、急性期治療研究2件、後遺症研究1件が進行中である。
急性期の治療研究では、観察研究1300症例の登録、およびランダム化比較試験160症例の登録が終了し、現在統計解析中であることも報告されている。
漢方の古典である「傷寒論」には、急性感染症に対して、現在でもよく使用される漢方処方が記載されている。このため、新型コロナウイルス感染症の流行当初から、漢方専門家の間では「漢方薬の出番」とも囁かれていた。比較的安価な漢方薬による治療が認められれば、医療経済的な効果も大きい。
今後、新型コロナウイルス感染症の収束までには時間を要すると考えられるが、漢方薬なども含めた治療の選択肢が増えることを期待したい。