2020年の年初来、国内での社会活動は、新型コロナウイルス感染症に翻弄されてきた数年間だった。今年の年明けは、各所で新年会なども開催され、アフターコロナの時代に入った感がある。コロナ禍で喪失したものもあれば、醸成された仕組みも多い。
コロナ前と大きく変化したのが、働き方としてのリモートワークだ。もともと、人と人との接触が増えることによる感染拡大を防止する意味合いで活用が進んだ。現在も大手企業などを中心に、リモートによる在宅勤務を継続実施している部署もある。場所や時間を効率的に活用するための手法として、相当に定着してきた。
国内では、コロナ禍の約1年前の19年4月に働き方改革関連法が施行され、多様で柔軟な働き方を可能とする方向性が示されたこともリモートワークが一気に進んだ要因でもあろう。
一方、働き方改革関連法の施行により、医療・医薬品業界にも大きく影響を及ぼすと見られるのが、4月から時間外労働の上限規制が始まる、いわゆる「2024年問題」だ。
これまで自動車運転業務、建設事業、医師は、長時間労働の背景や業務の特性、取引慣行の課題などから、5年間適用猶予事業・業務とされていたが、3月で猶予期間が終了する。
特に物流業界は、輸送に関して距離や時間はドライバーの残業に負うところも少なくなかった。残業が規制されドライバーの労働時間の減少により、輸送能力の低下も懸念されている。国の検討会では対策を施さなかった場合、営業用トラックの輸送能力が24年に14.2%、30年に34.1%不足するとの見込みが示され、大手物流企業を中心に対策が講じられている。
医薬品業界では、輸送能力の低下という課題よりも、医薬品自体の供給不安がクローズアップされている。21年末以降、複数の後発品メーカーで発生したGMP逸脱など不正により、製品の出荷の調整・停止や販売中止が相次いだ。
その出荷調整対象品目は、メーカーから卸、卸から薬局に対し、過去の実績による割り当てが行われている。これらの影響により、代替医薬品確保等の業務が医療機関・薬局などで大きな負担となっているのが現状だ。
ここに物流業界の「2024年問題」が絡んでくると、どのような状態となるのか未知数である。物理的には、卸も薬局や医療機関に対して、従来のような頻回配送や急配への対応、土曜日配送などが難しくなる可能性もある。
ICT化の進展で、コミュニケーション手段は劇的に変化し、物の受発注でも著しく効率化は進んでいるが、物を運ぶ手段はそれほど大きくは変わらない。24年は、医薬品のサプライチェーン全体で物流に対する意識の変革が必要になるだろう。