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改革の山が動くのか来年に期待

2023年12月27日 (水)

 今年もいろいろな出来事があった。年の瀬に社会を賑わせているニュースだけでも、複数の現職閣僚と与党幹部の交代を余儀なくされた政治資金関連の事案、民間では自動車メーカーの不正による全車販売停止など、社会全体への影響が大きい話題が目白押しとなっている。

 一方の薬業界では、残念ながら臨床試験段階から製造までのGCPやGMP違反事例が相次いで発生した。特に後発品メーカーによる不正は、現在の医薬品供給不足という深刻な状況の一因となった。不採算の薬価も一因だが、その問題意識が様々な制度改正につながった。

 中央社会保険医療協議会は20日の総会で、2024年度の薬価制度改革骨子案を了承した。6月にまとめられた「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」の報告書では、ポイントとして、▽安定供給の確保▽創薬力の強化▽ドラッグ・ラグ/ロスの解消▽適切な医薬品流通に向けた取り組み――を提示していた。

 骨子の具体的内容のトップには、ドラッグ・ラグ/ロスの解消に向けた革新的新薬のイノベーションの適切な評価を挙げており、今回の改革案は有識者検討会報告に則ったものと言える。

 薬価制度改革は、画期的新薬の適切な評価に限らず、新薬創出等加算の見直しをはじめ、新薬の収載時・改定時評価、小児の医薬品評価、新規モダリティのイノベーション評価のほか、後発品など医薬品の安定供給確保への対応としての基準改正を示すなど、多岐にわたっている。

 医薬品流通の課題、調整幅、中間年薬価改定、高額医薬品については、「引き続き検討することとする」と記載された。残された課題の一部だ。

 財政関連では、20日に鈴木俊一財務相と武見敬三厚生労働相が大臣折衝を行い、24年度の診療報酬改定率と薬価改定率のほか、長期収載品の保険給付見直しについて、選定療養を来年10月に導入することも決めた。

 さらに、医薬品に関係する国全体の新たな問題として、若者を中心とした、いわゆる“オーバードーズ”、医薬品の濫用が浮上した。

 薬業界の根幹を形成する薬価制度は当然、財源である診療報酬や社会保障費の負担影響も避けては通れない。しかし、国民が医薬品のリスクを知らずに、健康被害が発生する危険性がある過剰摂取を続けている現状に対して、医薬品の専門家は団結して真摯に取り組むべきだ。

 これまでには考えられなかった新たな潮流が多角的に発生している。医薬品業界では、制度改革案や様々な改善・是正のための方策が示されたが、残された諸課題への検討と具体策着手が待たれる。

 今年に前例のないほど数多の会合で検討して、制度改革への道標を示した。24年にどれだけ実効ある施策が展開されるのか、期待を持って年越しをしたい。



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