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濫用防止に学校薬剤師の活躍を

2023年12月15日 (金)

 厚生労働省の「医薬品の販売制度に関する検討会」が18日に行われる会合で、ようやく議論の取りまとめを行う。処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売(零売)や、第2類・第3類医薬品の集約、薬剤師が常駐しない店舗で遠隔販売をできるようにするなど、来年に控える厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会での議論を前に、一定の方向性が示されそうだ。

 一方で、着地点が見えないのが濫用の恐れのある医薬品の販売規制である。厚労省案では、20歳以下の若年者に対しては対面、または映像と音声によるリアルタイムでの双方向通信に基づくオンラインの販売を原則とし、テキストベースでやりとりするインターネットによる販売を不可とした。

 複数個・大容量の販売を不可とし、購入者の手が届く場所に陳列しないことも規制に加える。日本OTC医薬品協会や日本チェーンドラッグストア協会は「OTCの利便性を損なう」と反発。利便性と安全性がせめぎあう議論で調整が難航している。

 若年者の濫用目的での購入を防ぐための手立ては必要だが、適正に使用する購入者のアクセスが過度に阻害されることがあってはいけない。特に複数個・大容量の医薬品を購入しようとする20歳以上の購入者にネット販売不可とする規制のあり方は、医薬品アクセスの確保に配慮する見直しが必要ではないか。

 薬剤師がゲートキーパーとしての役割を果たしていくために、現場の意識改革も欠かせない。そもそもOTC医薬品を揃え、販売している薬局が多くないのが現実である。販売方法を規制する議論は必要だが、全ての薬剤師がOTC医薬品に精通し、若年者の濫用を食い止めるにはどうすべきか真剣に向き合わないと問題は解決しない。

 薬のリスクを広く国民に啓発していくために学校薬剤師の役割に期待したい。来年度予算概算要求では、OTC濫用防止対策として、これまでの医薬品適正使用教育の推進に加え、学校薬剤師・地区薬剤師会を活用した啓発や相談を実施する。画期的なことだ。

 これまでのくすり教育は危険ドラッグなどに偏り、OTC医薬品の濫用を防止するための教育は十分になされていない実態がある。学校薬剤師は、大学以外の学校で設置が義務付けられているが、水泳プールの学校環境衛生で職能を果たす一方、保健体育でのくすり教育では十分に力を発揮できているとは言えない。保健体育教師からは、専門性が高いくすり教育を行う上で学校薬剤師とのコミュニケーションを求める声もある。

 日本薬剤師会は、今年度の政策提言で学校薬剤師を全校で配置すると提言した。そのためには、学校薬剤師の待遇面での不均衡を改善する必要があるだろう。学校薬剤師という仕事に今一度光を当て、薬剤師の力でOTC濫用に歯止めをかけられるよう関係者全員が知恵を絞ってほしい。



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