厚生労働省医薬局長 城克文

近年、わが国は世界的にも類を見ない速さで高齢化が進行しており、個人の健康増進に寄与すると共に、医療現場における業務効率化の促進や、より効率的・効果的な医療等に資する各種サービスの提供が求められています。医療DXの一環として全国での運用が開始された電子処方箋は、昨年11月には4万を超える医療機関・薬局に導入され、さらに薬局において紙処方箋の調剤結果も登録していただくことにより、未導入の医療機関で処方された薬剤も含めたリアルタイムでの閲覧や重複投薬・併用禁忌のチェックを患者が受けられる環境が着実に広がっています。今後、より多くの医療機関・薬局への導入や円滑な運用に向けた環境整備を行っていきます。
本年は、2019年改正医薬品医療機器等法施行から5年目に当たります。その施行状況を踏まえた制度改善に加え、人口構造の変化や技術革新等への新たな対応を実現する観点から検討を進めてきました。
具体的には、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会において、▽医薬品等の品質確保および安全対策の強化▽品質の確保された医療用医薬品等の供給▽ドラッグラグ・ロス解消に向けた創薬環境・規制環境の整備▽薬局機能・薬剤師業務のあり方の見直しおよび医薬品の適正使用の推進――といったテーマの方向性が整理されています。
近年、医薬品の製造過程における品質問題に端を発した医薬品の安定供給確保が問題となっています。国民や医療現場の信頼確保に一層努めるため、昨年4月から全ての後発品企業に対し自主点検の実施を指示し、その内容を踏まえて、無通告立入検査を行うこととしています。
また、さらなる法令遵守や品質確保、違法行為の抑止に向け、医薬品医療機器制度部会において製造販売業者等による品質保証責任の明確化等という方向性が整理されています。
ドラッグ・ロスの拡大に対しては、昨年4月に取りまとめられた「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会」報告書やその過程での議論を受け、運用の見直しを行うと共に、同部会において、小児医薬品開発の努力義務化や条件付き承認制度の見直しを行う方向で取りまとめられる見込みです。
今後も関係者と率直な意見交換を行いながらより良い医療、国民生活の実現へ取り組んでいきます。