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薬機法改正、都道府県の支援重要

2025年05月09日 (金)

 通常国会に上程中の医薬品医療機器等法改正案は衆議院を通過し、参議院での審議に入った。医薬品の安定供給や品質、安全性の責任者を法定化するほか、医薬品販売制度なども見直す重要な法案だ。当初は4月中に成立するとの声もあったが、審議がやや遅れている。速やかな成立を期待したい。

 法案が成立した場合には、製薬企業や医薬品卸、薬局・ドラッグストアは施行時期までにその対応に向けた準備を急ぐ必要があるが、薬機法に基づいて監視指導を行う各都道府県の薬務主管課の対応能力に大きな懸念点があることを指摘しておきたい。

 今回の法改正では、都道府県が実施する業務に新たな業務が追加されることになる。例えば、GMP適合性調査は現行の「5年に1度」から「3年に1度」の頻度に見直される。調査の実施頻度が増える一方で、事前のリスク評価で低リスクと評価された製造所は「調査不要」とし、リスクが高い製造所に対して高頻度で実地調査を行えるようリスクベースに基づくメリハリをつけたGMP適合性調査に移行することとなった。

 各都道府県の薬務主管課が業務を遂行するためのリソースに疑問が残る。本紙が各都道府県に実施した調査で必要な人員の確保状況を聞いたところ、34都府県のうち「充足していない」が18で「充足している」の12を上回った。増員を検討する県もあるが、青森県は2人が減員となるなど人員計画でもバラツキが生じている。

 また、GMP調査見直しにより業務負担が「増える」との回答が11、「分からない」が17に上り、「減る」はゼロだった。「分からない」の中には「業務量が増える可能性がある」と考えている回答が多く含まれていた。

 今後も業務量の増加が予想される中、現状でも充足していない調査人員数でどのように体制を整備していけばいいのか苦悩している実態が浮き彫りになった。

 重要なのは国から都道府県へのサポートだ。都道府県は調査員の数と質を同時に強化しなければならないことにも強い不安を感じており、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に調査同行や教育訓練などの支援を求める声も相次いだ。

 薬局・薬剤師関係でもデジタル技術を活用した医薬品販売などが認められ、都道府県の負担が増す。多くの県が「薬剤師等が常駐しない受渡店舗が多くなり、現地での監視指導は困難になる恐れがある」とし、都道府県が監視指導を行う上で国が統一基準を示すなどの対応策が必要になる。

 薬務行政のあるべき姿は厚生労働省が全てを考えて動かしていくのではなく、都道府県ができることはシフトしていくのが望ましい。ただ、地方が変わるには一定の期間を要する。薬機法改正を機に、国と都道府県薬務主管課が向き合い、将来的には薬務主管課の自立につなげてほしい。



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