島津製作所は20日、感染症や医薬品の検査、食品の衛生管理、河川の水質検査などで実施されている微生物同定向けに、独自開発の大規模データベースを活用した、微生物同定ソフトウェア「MicrobialTrack」を国内外で発売したと発表した。マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析計(MALDI-TOFMS)で取得した微生物の測定結果をデータベースに照会し、国際原核生物命名規約に基づき発表済みの分類に加え、難培養・未培養の分類を含む、8万種を超えるの微生物(バクテリア、アーキア)のうち、対象がいずれに該当するかを3時間以内で特定できる。
同製品は、ゲノム配列から推定された微生物の蛋白質の理論質量との類似度で同定する「プロテオミクス法」を採用している。微生物同定で用いる原核微生物蛋白質理論質量「GPMsDB」には、公共ゲノムデータベースから得られた約40 万件のデータに由来する原核微生物の理論質量が登録されている。発表済みの微生物に加えて、学名が付与されていない未培養・難培養を含む8万5000種が分析対象となる。
これにより、MALDI-TOFMSでは対象とされていなかった広範囲の微生物の分析が可能になっている。公共のゲノムデータベースには、年間数十万件の微生物ゲノムデータが新たに登録されるため、常に最新情報に基づくデータベースで微生物を紹介できる。
また、同製品はクラウドサービスであり、インストールや装置の据え付けが不要で、ウェブサイトでIDとパスワードを入力・ログインするだけで解析を始められる。
パソコン画面でログイン後、わずか3ステップで解析作業をスタートできる。解析結果は、信頼度に応じた色つきアイコンと共に、類似度の高い微生物がランキング形式で表示される。さらに、プロテオミクスに基づくMALDI-TOFMSの解析結果や蛋白質情報も併せて提供されるため、通常は専門的な知識が必要な解析が簡単にできる。
ライセンス期間中は追加費用なしで最新の「GPMsDB」による微生物同定が可能となっており、同社製以外のMALDI-TOFMSで取得した測定結果にも対応する。
希望販売価格は132万円~(税込み)で、販売目標は発売後1年間で国内外合わせ100ライセンス。