
金岡氏
医療用サポーターなどを手がける日本シグマックス株式会社(本社東京・新宿、鈴木洋輔(すずきようすけ)代表取締役社長)は9日、東京・広尾のコアトリムステーション広尾で、メディアラウンドテーブル「なぜ腰痛はくり返すのか 見落とされがちな『4つの発症タイプ』」を開いた。早稲田大学スポーツ科学学術院教授で整形外科専門医の金岡恒治(かねおかこうじ)氏が、腰痛診療の現状と課題、運動療法の知見を解説した。金岡氏は、画像検査で診断できない腰痛が約8割を占めるとし、問診や診察で痛みの由来を見極め、病態に合った運動療法につなげる重要性を強調した。
腰痛による社会的損失については、就労中の労働生産性低下による損失が年間約3.0兆円、腰痛関連疾患の医療費が2011年に約8365億円とする論文を紹介した。腰痛には大きく分けて、(1)筋肉・筋膜、(2)椎間板、(3)椎間関節、(4)仙腸関節に由来するものがあるが、山口県の整形外科外来受診者320人を対象とした病態分類調査では、画像検査で診断できる病的な腰痛は約21%にとどまった。残る約8割は、画像検査では診断できない「見えない腰痛」、すなわち非特異的腰痛だと説明した。
画像診断には別の課題もある。症状がない人でも、椎間板膨隆は20代で3割、30代で4割、40代で5割にみられ、50代では6割に達するとして、金岡氏は、画像だけで判断すると、筋や別の関節に由来する腰痛まで椎間板ヘルニアと診断しかねないと指摘。腰を反らす、斜め後ろに反らす、痛む場所を押して確認する、脚を持ち上げるなどの診察所見を通じ、痛みの発生源を推定する必要があるとした。
金岡氏がコアトリムステーションで行うセカンドオピニオン外来では、医療機関で脊柱管狭窄症と診断された193人のうち、手術を勧められた人は19人、実際に手術を受けた人は11人だった。筋やほかの関節に痛みの原因があり、手術をせずに運動療法で改善する人も少なくないという。慢性疼痛診療ガイドラインでは、慢性腰痛に対する運動療法の推奨度が1、エビデンスレベルがBとされるが、国内では十分な指導を受けられる環境が整っていないことも課題に挙げた。
金岡氏は、体の使い方を整えるモーターコントロールエクササイズにも注目する。スポーツ庁の委託事業として北海道東川町の住民を対象に実施した実証研究では、腰痛の程度を示すNRSに改善がみられたという。また、身体機能が低下すると姿勢が崩れ、腰痛や肩こり、膝痛などの運動器障害につながり、腰痛者は要介護リスクが1.5倍になるとの報告も示した。薬や湿布で一時的に痛みを抑えるだけでは機能は戻らないとして、身体機能を高め、健康寿命を維持する介入が重要だと訴えた。
日本シグマックスは、1973年の創業時から、整形外科領域を中心とした医療機器・ヘルスケア企業として、「運動器の健康」を通じた健康寿命の延伸に取り組んできた。こうした事業背景を踏まえ、運動器の健康に関する最新の知見や社会課題について、専門家と報道関係者がともに考える機会として、複数回にわたる「メディアラウンドテーブル」を開催していくとしている。今回はその第1回。第2回以降も、医療現場で培った知見やエビデンスを基に、運動器領域の社会課題への理解と情報発信の活性化を目指すとしている。
コアトリムステーション広尾は、日本シグマックスの関連会社であるコアトリム株式会社(仁科倫抽(にしなみちひこ)代表取締役)が運営する、腰専門のコンディショニングスタジオ。
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