日本OTC医薬品協会会長 吉野 俊昭

昨年3月11日の東日本大震災から9カ月余りが経ち、本格的な復興に向け様々な活動が始まっておりますが、被災された皆様には改めてお見舞いを申し上げます。
東日本大震災は、未曾有の災害となりましたが、そんな中私たちは、『絆』や『支え合う』大切さを改めて知ることができたと思います。そして、当協会に加盟する製薬メーカーはもちろん、関係する団体やそこに加盟する企業が力を合わせていくことで、大きな力を発揮できることにも気づかされました。
当協会では、『セルフメディケーション振興』を大きなテーマに活動を続けていますが、今年はセルフメディケーションを『理念』から『実現』に移すため、具体的なアクションを掲げ、昨年発足した『日本一般用医薬品連合会』を軸に、関係する団体と積極的な対話を行い、連携を深めていくことで、着実な実現を目指していきたいと考えています。
今年のアクションは、大きく四つ掲げていますが、その一つに、いわゆる『薬育』活動があります。ある機関の調査によれば、この震災前後で生活者の意識が変化しており「生活者は自分の身を自分で守りつつ、社会における自分の役割を創ろうとしていること、自分の基準・判断・責任で動き、自立した個として人とつながろう」としていることが報道されております。私自身も被災地の学校にうかがい、OTC医薬品をお届けした折にその使い方などをご説明すると、熱心に耳を傾けていただき、また多くの質問を頂戴しました。OTC医薬品によりご自身の身を自分で守り、自らの判断で動こうとされている姿を実際に拝見し、これこそがセルフメディケーションの姿なのではないかと感じた次第です。
私ども製薬メーカーは、被災地の皆様に必要と思われるOTC医薬品などをご提供し、直接被災地へ行って応援もしていますが、医薬品はモノとしてご提供するだけではなく、その使い方や効能・効果、リスクをご理解いただいて初めてお役に立てるものになります。これからは被災地の方だけではなく、すべての生活者の皆様のセルフメディケーションを支援していくためには、いわゆる『薬育』活動として、OTC医薬品の使い方などご理解いただけるよう取り組んでいきたいと考えており、新学習指導要領改訂により4月から開始される中学校での『くすり教育』にも積極的に関与していきます。
今年、当協会は『薬育』を含め、セルフメディケーションによる「国民皆保険制度維持に向けた取り組み(36兆円医療財政の健全化)」として、以下の四つを大きなテーマとして掲げ、活動してまいります。
[1]OTC医薬品の税制控除の実現
[2]OTC医薬品枠の拡大(予防効能、生活習慣病薬&検査薬のスイッチOTC化)
[3]いわゆる『薬育』教育支援(OTC医薬品の正しい使い方を啓発)
[4]いわゆる『軽医療分野』の一部をセルフメディケーションで対応(生活習慣病・検査薬などの貢献)
前述の「OTC医薬品の税制控除の実現」は昨年9月に、「OTC医薬品枠の拡大」は10月に、それぞれ日本一般用医薬品連合会より小宮山厚生労働大臣宛てに要望書を提出しているところですが、今年はこの要望を実現するために具体的な取り組みを行っていく予定です。
さらに、これまで同様アジア太平洋セルフメディケーション協会(APSMI)の支援を通じて、アジア太平洋地域でのセルフメディケーション推進、OTC薬事規制の最適化を通じてアジア太平洋地域の健康産業、特にOTC産業の発展と市場活性化を図るべく活動を進めてまいります。
世界でも優れた制度である日本の国民皆保険制度維持に向けて「自分の健康は、自分で守る」セルフメディケーションは必ずお役に立てるものと考えております。当協会は、セルフメディケーション振興により、国民の皆様の健康維持・増進に寄与していきたいと考えております。ぜひ、今後とも皆様のご理解とご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。