高知で41℃という日本最高気温を更新した殺人的な(実際に多数の死者を出した)酷暑も一段落したようだが、まだまだ今年は異常な熱波が列島を襲い続けそうな気配である。
一息吐いたといえば、8日に日本医薬品卸売業連合会が公表した「2012年度医薬品卸業の経営概況(速報値)」で、最悪の状況から若干の改善が見られたことに安堵した業界関係者は多かろう。
内容は既報のとおりだが、改めて触れてみたい。13年の医薬品市場の伸び率は2・08%(クレコンリサーチ&コンサルティングのデータ参考)だったが、回答した63社の売上高伸び率は1・41%と市場伸長率を下回った。販管費は0・53%、人件費は1・08%、従業員数は0・90%増加した。
売上総利益率は前年の6・44%から6・75%へ改善したほか、販管費率は前年と変わらず6・13%だった。多くの卸企業がポイントとして掲げていた営業利益率は前年の0・32%から0・63%へと改善したものの、目指している1%へはまだ届いていない。
業界が一丸となって取り組んできた医療用医薬品の流通改善も、道半ばだが成果は見えてきている。今年、新会長に就任した鈴木賢氏は、「妥結率の問題等が解決していないため、はっきりとしたことは言えないが、経営の数字は相対的によくなってきている。医薬品卸は社会的インフラとして、もう少し利益率を上げていくことが、投資の面からも必要だ。各社ともそういう方向で努力しているのではないか」との認識を述べた。
同調査によると、従業員数は5万4254人で、事業所数(本社数63社)は1496で1事業所当たり36・3人となっている。卸の経営が安定的に推移するには、何よりも卸自身の意識と姿勢が最も重要なファクターとなる。
もし再び、存亡に大きく影響するような経営状況に陥れば、「卸はなぜ、何度も同じ過ちを繰り返すのか。何をやっているのか」と社会から見離されてしまうことだろう。
5万4254人の社員だけでなく、その家族も含めて後ろめたさを感じてしまう恐れが生じる事態だけは絶対に避けなければならない。自分の仕事に誇りを持たなければ、その業界が失速してしまうことは自明だ。
社会インフラとしての役割、機能を有すると自負する医薬品卸は、自らを律し続けて、社会に誇れる業界、個々の企業となる使命も負うことになる。安定した適正な利益を必要な投資に回せることが常態化しなければ、その実現は非常に困難になる。
医薬品卸が安定することは、医療のみならず、医療保険制度、ひいては社会、国家への貢献につながることは自らが一番知っていることだろう。社員が、そして家族も誇れる医薬品卸となるよう、大いなる期待を込めて、今後の推移を見届けたい。