2015年を振り返るにはまだ早いが、今年の薬局薬剤師を取り巻く出来事や議論は、「医薬分業のあり方」のターニングポイントとして、後世の薬剤師の薬局業務に大きな影響を与える可能性が高いような気がする。
経時的に関連したトピックスを挙げると、まずは、年初の大手ドラッグストアに端を発した「薬歴未記載問題」がある。
その後の点検では未記載は約81万軒に及んだ。これらは組織的な不正だけではなく、業務上のケアレスミスも含めての数字だが、一般マスコミにも取り沙汰されたこともあり、不明瞭な薬局業務について国民からの厳しい視線にさらされた。
また、3月には保険薬局の主業務でもある処方箋調剤の根幹となる医薬分業について、規制改革会議が「医薬分業における規制の見直しについて」と題する公開ディスカッションを開催。
その後、国民に医薬分業の現状理解を促しながらの議論が推進され、6月末の同会議の答申では、医薬分業推進のもとでの規制の見直しの中で、▽薬局における診療報酬とサービスのあり方▽保険薬局の独立性と患者の利便性向上の両立の見直し――について規制緩和を年度内に検討し、来年度に実施することを求めた。
一方で、厚生労働省では6月から進めてきた健康情報拠点薬局(仮称)のあり方に関する検討会を経て9月に「健康サポート薬局のあり方について」をまとめた。さらに、塩崎恭久厚労相が5月の経済財政諮問会議で社会保障分野の改革として策定を明言した「患者のための薬局ビジョン」を10月に公表。厚労省は今後、ビジョンの実現に向け、かかりつけ機能強化のためのモデル事業や実態調査などを実施していく考えのようだ。
つまり、今年1年は、医薬分業推進により機能変化してきた薬局業務や構造規制まで、患者視点からの利便性やコストメリットを中心に大きく見直し、将来のあるべき姿に向けたスタートを切る転換期になるかもしれない。
その詳細については、ここでは触れないが、今後、中央社会保険医療協議会の16年度診療報酬改定議論の中で、これらをどのような形として落とし込んでいくかが注目されるところだ。
いずれにせよ今後、医療費財源が逼迫する中で、医療保険財源から拠出される診療報酬に関しては保険薬局だけに限らず、医療全般にメスが入る可能性はある。既に中医協では、医薬品や医療機器を保険適用する際の医療技術評価(HTA)を来年度に試行的に導入する方向で進めている。
HTAは、例えばある医療行為であれば、単に費用対効果だけではなく、その行為がどれだけ価値を生んでいるかとの比較で、その行為が適切かどうかを判断する考え方のようだ。
将来的に、調剤報酬にもHTAが導入される可能性は否定できない。薬剤師も従来とは違う新たな視点で、薬局業務に臨む時代が来そうだ。