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示された新時代の薬局像の道筋

2015年10月30日 (金)

 厚生労働省は、健康情報拠点薬局(健康サポート薬局)のあり方をめぐる検討会の報告書が先頃まとまったのに続き、「患者のための薬局ビジョン」を先週末に発表した。この中では、患者本位の医薬分業の実現に向けて、将来的な高齢社会の環境も踏まえて、かかりつけ薬剤師・薬局のあるべき姿、道筋などが示された。

 医療関係など他職種とも連携しての在宅医療サービスを推進し、お薬手帳(電子版含め)を活用しての健康支援の推進など、地域全体で薬剤師・薬局機能のさらなる強化を目指すことなど、より“地域密着型”の患者支援の仕組み構築を求めている。これに対し、日本薬剤師会では「覚悟を持って取り組んでいく」意向を発した。

 薬局・薬剤師に望まれる医療機関との連携、他職種との連携だが、お互いに専門分野を理解し合ってスムーズに連携を図っているケースは少なくないが、その逆もまた少なくないようだ。その一端は、これまで数度にわたって開かれてきた前出の検討会の議事録からも見てとれる。

 地域の薬剤師会会長も務める某氏はある会合で、これまで同検討会を傍聴してきての感想を語ってくれたが、「薬局はスーパー等とは違う。住民が“気軽に立ち寄る”という表現はおかしい」「健康づくりは、かかりつけ医に任せるべき」「来店者の症状を判断してOTCを売るのは診療行為ではないのか」「OTCを置くような薬局には院外処方箋を出したくない」「薬局が栄養士を雇って栄養指導したりするのはどうか」などの発言が、医療機関を代表する委員から出されたという。

 これらは、薬局に対する不信感というか“不快感”の部分であり、現状の薬局の存在や役割を理解している意見ももちろんないわけではない。裏を返せば、それだけ薬局・薬剤師が関与できる部分(機能)が広いため、あれもこれもと抱えるのではなく、重要なのは専門である「薬」の部分であり、まずそこをしっかりと担ってほしい。

 ただ単に薬を患者に渡して終わりではなく、残薬を含めた丁寧な服薬指導や副作用等のフォローアップを今まで以上に充実するのが先決――との主張であったと捉えられないか。

 医薬分業のメリット、薬局が果たすべき(果たしてきた)機能が「国民に十分に理解されていない」との指摘があるが、これからは“顔の見える薬剤師”を打ち出すことは、医療職種の連携による地域包括ケアがクローズアップされているだけに、患者啓発以上に医療関係者に対する行動がより重要となってくる。

 医療職種で重なる部分があるのは当然であり、要はいかに手厚く患者一人ひとりに専門性を生かすことができるかだろう。「患者のための薬局ビジョン」実現には、これまで以上に団体・組織や業種業態を超えた薬剤師の行動が求められる。



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