被験者リクルートメントを支援する企業

林氏
SMOのコスメックスは、病院口コミ検索サイトを運営するカルー社と連携した被験者エントリー推進システム「Smart-Patient In」を展開し、患者が自発的に治験に参加する環境の実現を目指している。カルーとのシステムでは病院選びで主流になっている口コミ検索、最新医療系記事等の特集企画を駆使し、患者が治療法を探す中で治験情報に簡便にアクセスできる仕組みを用意することで、被験者エントリースピードを向上させたい製薬企業、外部から被験者候補者を増やし契約症例を早期に達成したい医療機関・SMO、そして有効な治療機会を求めて治験に自ら参加したい患者の3者にベネフィットをもたらす。中でも、希少疾患や急性期疾患、小児対象など従来、患者の発生を院内で待つしか対応できない領域で、被験者エントリー推進を提案していく方向。今後さらなるシステム強化に取り組み、“治験情報検索の食べログ”のような患者目線のプラットフォームにする。
被験者エントリーの方法にも新潮流が生まれている。製薬企業は患者数の少ない希少疾患や難病開発にも乗り出しているが、従来のfeasibility調査の手法だと本当に参加してもらえる被験者数を把握することができない一方、患者は新たな治療法を探すために、スマートフォンやタブレットPCから医療系の情報WEB経由で治験情報にアクセスする動きが加速し、両者にミスマッチが起こっている。
そんな中、コスメックスが提案するのが、医療に特化したWEBメディアによる双方向での被験者募集/治験参加のアプローチだ。患者にとって治験が治療手段になる中、治験に参加したいというニーズに応え、エントリースピードを高めるシステム「Smart-Patient In」を展開している。利用実績は施設全国約270施設、SMO28社、製薬企業14社にのぼる。
「Smart-Patient In」は、月間700万(1日約23万)人の患者が病院を探す日本最大規模の病院口コミ検索サイトを運営するカルーのシステム内に、患者が治験に参加するための導線を確保している。治療法を探す患者がカルーのシステムで疾患啓蒙記事や治験参加広告などで情報を取得し、そのシステムの中で用意されたアンケートに回答すると、対象治験の参加条件となる適格性も判断できるようになっている。
被験者候補者の適格性に関する情報は、「Smart-Patient In」を通して施設CRCとも素早く共有され、CRCは被験者候補者に直接内容確認を行う。患者自身が自由意志で治験情報を取得し、治験参加にも前向きであることから、候補者への説明に時間を取られずに同意取得率を上げることも可能になる。患者は仮に条件を満たせず試験に参加できなくとも施設の治療患者にもなれるので患者、施設双方にもメリットがある。
さらに製薬企業に対しては、製薬企業が自社運営している治験情報サイトとカルーの情報サイトを連携させ、患者からの参加をさらに増やす工夫や、日経広告社とも組み、複数の大手医療系WEBメディアからカルーのエントリーページに誘導する方法も検討している。こうした仕掛けが関心を呼んでおり、外資系大手からも小児治験の被験者募集で「Smart-Patient In」の導入に向けた検討が進んでいるという。
被験者エントリーをめぐっては、多施設少症例治験、同意取得の困難、症例未達による施設追加、試験期間の長期化と課題が山積で、院内患者から被験者を単純に探すという従来の手法では限界点に達している。林一郎社長は、患者を病院に集めるという「Smart-Patient In」の特徴から、被験者エントリー推進における情報投資の重要性を指摘。「従来は施設選定だけの投資だったが、治験エントリーを希望している多くの患者に広く治験施設を紹介していく情報投資が必要な時代になっている。われわれとして治験依頼者側に提案していきたい」と語った。