現場目線で講座のテーマ選定
東京薬科大学(東京都八王子市)の卒後教育講座は、今年で44年目を迎えた。これだけの歴史と伝統を維持できるのは、「自ら学ぼうとする薬剤師をバックアップしたい」との思いと、「ニーズをうまく捉えたテーマと講師の選定」にほかならない。それを可能としているのがテーマ選定を行う「卒後・生涯教育委員会」だ。学内だけでなく、薬局や病院薬剤部、製薬企業などで活躍している卒業生が学外メンバーとして参加し、現場目線での提案を行っている。また、学生のうちから臨床に触れる機会を増やすことを目的に、「在学生の講座への参加」を積極的に進めており、今年は延べ90人を超えた。同大学薬学部医薬品安全管理学教室の杉浦宗敏教授は、今後も「継続して増やしていきたい」と考えており、将来を見据えた取り組みとして行っている。
杉浦氏は、「医療が日進月歩で発展する中、卒業後も継続して自己研鑽を行うことが大切であり、改訂薬学教育モデルコアカリキュラムでも、生涯にわたって自己研鑽を積むことが明記されている。大学としても自ら学ぼうとする薬剤師をバックアップしていかなければならないと考えている」と語る。
1974年9月に第1回の卒後教育講座をスタートさせてから今年で44年を迎え、7月1日の講座で266回に達した。卒後教育講座を提供する大学の中では、パイオニア的な存在だったようだ。
講座によっては、「九州から講座に参加する人もいる」(杉浦氏)ため、会場はアクセスのいい東京医科大学病院(東京・新宿区)の臨床講堂を使用しているが、毎回、定員300人ほどの会場が常に満員になるほど盛況だ。
他大学の卒業生の参加が多いのも特徴だ。卒後教育講座の参加者の内訳を見ると、同大学出身者が約4割なのに対し、同大学以外が6割を占める。
講座の人気を維持する上で重要なのが、「ニーズをうまく捉えたテーマと講師の選定」だが、その秘訣は、実際にテーマ選定を行う「卒後・生涯教育委員会」にある。
通常、テーマ選定は学内の関係者で行われることが多いが、同委員会には、同大学を卒業し、薬局や病院、製薬企業、医薬品卸などに勤務する薬剤師が学外メンバーとして参加。現場目線で、「“こういうテーマを取り上げてはどうか、このテーマだったらこの人を演者に呼んではどうか”などの意見を出してもらい、両者の意見を取り入れる形でテーマと演者の選定を行っている」(杉浦氏)という。
同大学は、委員会へ積極的に学外メンバーを推薦し、さまざまな分野の第一線で活躍している卒業生が多いという強みを活かしている。
既に終了したが、5月13日の「2020年に向けたスポーツファーマシストの取り組むべき課題」―遠藤敦氏(アトラク代表取締役)の講座は、2年後の東京五輪の開催を見越して、「薬剤師がどう関われるか」という視点でテーマにとり入れたところ、「盛況だった」という。
また、7月1日の「在宅医療における薬剤師の役割~認知症患者への対応~」―高瀬義昌氏(たかせクリニック理事長)では、医療人として認知症患者にどう接したら良いかについて講演してもらったところ、フロアから数多くの質問が出るなど、「評判が良かった」ようだ。
10月7日には、「患者に身近な臨床検査」―下澤達雄氏(国際医療福祉大学三田病院検査部主任教授)の講座が予定されている。医薬品を適正に使用するに当たり、検査値を参考にして患者に説明しなければならないケースが増えており、関心を集めそうだ。
このほか、同日に「褥瘡治療を阻害する病態と外用薬の効果的な使用~今注目されるFuruta Methods~」―古田勝経氏(小林記念病院褥瘡ケアセンター長)などの講座も予定されている。
在学生の卒後教育講座への積極的な参加を進めているが、杉浦氏は「在学生の参加をさらに増やしたいと考えている」と話す。臨床現場を肌で感じてもらい、将来、社会人としてどう活躍していくかをイメージしてもらいたいからだ。
2~5年次の学生を中心に、年間延べ90人ほど参加させているが、実務実習を終えた後、講座に参加した学生からは、「現場で学んだことの理解がより深まった」などの感想が聞かれるという。
杉浦氏は、「学生が刺激を受けている」ことから、「少しでも多くの学生にそういう機会を提供したい」と意欲を示した。
東京薬科大学・卒後教育講座
http://www.ism.toyaku.ac.jp/division/division_04.html