多剤服用や業界動向の講座新設
明治薬科大学(東京都清瀬市)は、認定薬剤師研修制度のプロバイダーとなった2007年から多数の生涯学習講座を提供している。今年度から高齢者の多剤服用(ポリファーマシー)に関する講座や業界の動向を伝える講座などを新設した。インターネットを活用したeラーニングの対象講座を拡大して受講機会を増やすことも検討しており、昨年度から始めた在宅医療に関する講座への導入を進めている。
明治薬大は、「薬剤師が現場で生かせる講座」を提供しているのが特徴で、昨年度は国が進めるかかりつけ薬剤師・薬局、健康サポート薬局を充実させるため、経験がなくても在宅医療のノウハウを一から学べる講座を開設した。今年度の生涯学習講座の方向性について、薬学教育研究センター地域医療学准教授の菅野敦之氏は「引き続き在宅にスポットを当てつつ、話題の内容を取り入れている」と説明する。
新たに設置したのが、社会問題となっている高齢者のポリファーマシーに関する講座だ。定義や原因など基本的な項目を説明した上で、多職種協働チームにおける薬剤師の役割を紹介。その後、小グループディスカッションを行い、事例をもとに処方内容を検討する。募集後すぐに定員に達し、終了後のアンケートでも好評を得ているようだ。
在宅患者の状態を一定程度把握できる薬剤師の育成を目的とした「薬剤師によるバイタルチェックの基礎」講座も今年度からスタートさせている。医師免許を持つ教員が座学を指導し、理解度を上げるため質問に丁寧に回答することを心がけている。また、受講者が特殊な人形を使い、聴診器で心音・呼吸音・脈拍といったバイタルサインを確認するなど、体験型の内容としている。
さらに、厚生労働省と日本薬剤師会による特別講座も設置した。「患者のための薬局ビジョン」と「地域包括ケアにおける薬剤師の期待される役割」をテーマに、業界の動向や方向性を語ってもらう。「今年度の後半に業界に大きな動きがあると思うので、行政の発言を見極めつつ、現場でここは備えておいたほうが良いと教えることを意識している」という。
その他、患者に情報提供する際の添付文書の読み取り方や最新の癌化学療法を紹介する講座も新設している。
昨年度から始めた「ゼロから始める薬局の在宅医療」では、未経験から地域で在宅の中心的役割を担うまでになった薬剤師を講師に招き、体験談や実務的な手続きを中心としたノウハウをレクチャーしている。昨年度は在宅医療に取り組んでいる人はいなかったが、今年度は3割程度の受講者が実践しており、より具体的な質問内容が出るようになった。「在宅への関心が高まっていることは間違いない。調剤報酬が厳しくなり、余力がないから在宅を諦めたという声が一部の薬局から出ているが、高齢化のスピードを考慮すると在宅は外せない」と菅野氏。来年度も在宅に注力し続けていく考えだ。
一方で、菅野氏は「もう少し受講しやすくするため、講座のあり方を検討する必要がある」と課題を挙げた。その対策の一つが、漢方・鍼灸の講座で先行しているeラーニングの拡大だ。今年度から在宅医療の講座に導入するほか、学内のベテラン教員が「これからの薬剤師のあり方」をレクチャーする講座も新設し、eラーニングで提供する予定。受講後に小テストを実施することで講座の質を担保する。卒業生を含め研修を受ける機会がない人のバックアップに力を入れ、将来的にeラーニングの枠を増やした上で、ニーズを把握したいとしている。
来年度以降に注力したい分野について、菅野氏は「検討する必要がある」としながらも、引き続き薬剤師の業務に生かせる講座を増やし、可能な限り先進的な内容を取り入れる方針だ。菅野氏は「薬剤師としてどれだけ住民に信用してもらえるかが大事。そのために必要なコンテンツは大学が提供するので、社会に還元してほしい」と語った。
明治薬科大学・生涯学習講座
http://www.my-pharm.ac.jp/lifelong/index.html