日本薬剤師会専務理事 寺山善彦

今年は、4月30日に天皇陛下が退位され、5月1日に新天皇陛下が即位されて「令和」に改元されるという、わが国にとって新たな時代に向けた節目の年となりました。日本薬剤師会では、山本信夫会長が即位礼正殿の儀、大嘗宮の儀に参列する栄に浴しました。薬剤師にとっては、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)等の改正が大きな出来事でした。
薬機法等改正法案は3月19日に第198回通常国会に提出され、第200回臨時国会へ継続審議となりましたが、11月27日に可決・成立し、今月4日に公布されました。薬局については、調剤する場所とされてきた薬局の役割が、薬剤のみならず一般用医薬品等も含めた全ての医薬品の供給施設として再定義されました。
薬剤師については、医薬品の服用期間を通じた患者・住民の服薬状況の把握や指導を行い、必要に応じて医師等に情報提供するよう努め、薬物療法の最適化に寄与することが基本的機能であり、医療機関等との情報連携や在宅医療に一元的・継続的に対応できる薬局と、専門的な薬学管理を他の医療提供施設と連携して対応できる薬局を認定する制度が導入されることとなりました。
これにより、住民が住み慣れた地域で安全に安心して医薬品を使うことができるよう、薬剤師・薬局が全ての医薬品の使用状況を一元的・継続的に把握し、地域住民の薬物治療の責任を担うこととなります。
4月2日には、厚生労働省より「調剤業務のあり方について」が通知されました。これは、薬剤師が調剤に最終的な責任を有するということを前提に、薬剤師の指示に基づき、薬剤師の目が届く限度の場所で実施されること等の条件をいずれも満たす場合に、薬剤師以外の者に実施させても差し支えない業務を具体的に示したものであり、現行法の範囲内における調剤業務のあり方を整理すると共に、従来の法令上の解釈について明示したものであると認識しています。
6月に示された「骨太の方針2019」では、調剤報酬について、かかりつけ機能に応じた適切な評価や対物業務から対人業務への構造的な転換を推進し、高齢者の多剤投与対策等も含めた適正な処方のあり方を検討すること、また健康サポート薬局については、一般用医薬品等の普及などによりセルフメディケーションを進めていく中で、効果を検証しつつ取り組みを進めていくこととされました。
これは、薬剤師・薬局が対人中心の業務に転換し、必要かつ適切な薬学的サービスを提供すると共に、医薬品等の供給拠点として地域医療提供体制充実に貢献していくことが求められるということにほかなりません。
9月には、安倍首相を議長とする全世代型社会保障検討会議が組織されました。本会は、日本医師会、日本歯科医師会と共に11月8日のヒアリングに出席し、外来受診時の定額負担と高齢者の窓口負担増は導入すべきではないこと、薬剤自己負担に関しては、市販品類似薬であることのみをもって保険給付範囲の見直しや給付率を変えることは、わが国の医療保険制度の原則を大きく変えることとなり、国民に対する医療手段の制限にもなることから、反対であることを表明しました。
10月1日、消費税が引き上げられました。保険調剤にかかる消費税は、診療報酬等に反映することとされてきましたが、消費税導入時とその後の引き上げにおいて十分補てんされていないことが明らかになっていることから、本会は抜本解決を要望していました。
今回の引き上げにおいては、従来と同じく診療報酬への補てんにより対応する一方で、結果を精緻に検証して継続的に状況を確認し、過不足が生じないよう見直すこととしていますが、今後の動向を注視していきたいと考えます。
20年度診療報酬(調剤報酬)改定については、今月17日の厚生労働大臣と財務大臣の折衝の結果、診療報酬本体+0.47%、調剤報酬+0.16%が公表されました。医科:調剤=1:0.3が堅持されたこと、16年度や18年度のような通常改定分とは別の適正化措置が行われなかったことは評価できますが、薬価引き下げに伴う在庫医薬品の資産価値の減少は、保険薬局の経営に影響を及ぼすことが危惧されます。
改正薬機法には、わが国に薬剤師と薬局制度が導入されて130年が経過する中で、時代の変化に即した社会的ニーズに適合した薬剤師・薬局への転換に向けた道標が示されています。全世代型社会保障制度構築に向けた議論やそれに続く制度設計においては、医療の高度化、複雑化などによる医療費全体の適正化も課題となっています。
これからの時代のニーズに効率的、効果的かつ的確に対応すると共に、住民・患者から信頼されて選ばれるかかりつけ薬剤師・薬局としての機能と役割を充実・強化し、地域包括ケアシステムにおいてチーム医療の一員として、期待される役割を果たしていくことができるよう活動していきたいと考えています。