新型コロナウイルス感染症への効果が期待される治療薬として、抗ウイルス薬「レムデシビル」が7日に特例承認され、アビガンも今月中の承認が視野に入ったほか、13日には抗原検査キットが承認された。一方、感染経路の把握やPCR検査までの煩雑な過程など、サーベイランス上の諸問題が指摘されている。
厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策推進本部は4月30日、全国の都道府県・保健所設置市・特別区衛生主管部局長宛てに、事務連絡「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(仮称)の導入について」を発出した。メールや電話による報告、連絡、問い合わせを、多忙な保健所の業務負担軽減、情報共有・把握の迅速化を図ることを目的に、緊急的対応として開発・導入すると説明している。
多くの国民も同様だろうが、今までインターネットを介した電子化された関連情報システムがなかったことに驚きを隠せない。今週、一部保健所で先行利用を開始し、来週から全国で運用する予定だとしているが、どうしても遅きに失した感は否めない。
相当な国家予算を投じた布マスク配布も、今週から東京都以外への配布が始まったが、市井に適切な価格の不織布マスクが溢れ出した今では、実行があまりにも遅すぎると感じる。
厚労省は、システムの活用により、保健所、保健所以外の部門、都道府県、国、関連医療機関、関係業務を受託する都道府県・地区医師会で即時に情報共有でき、より効果的な施策を講ずることが可能になると共に、保健所からの都道府県、国への報告事務、国から都道府県等への問い合わせ事務の大幅減少が期待されると強調する。
情報共有の迅速化と事務負担軽減につながる機能として、▽発生届を電子的に行うことで保健所の入力作業省略、医師による手書きFAX作業からの解放▽宿泊療養・自宅療養中の本人が、健康状態をアプリを活用してスマホ等で報告し、健康フォローアップでの聞き取り作業を大幅に効率化▽患者の居住場所・重症度等を関係者間で共有でき、入院調整、医療資源の効率化に活用▽都道府県、国等と即時に必要な統計情報が共有でき、問い合わせを大幅減少▽迅速な情報把握でデータ分析が充実――をアピールしている。
しかし、加藤勝信厚労相の誤解を招きかねない『誤解』発言、国と都道府県間で感染関連数値確認の不徹底をはじめ、正確にな情報伝達、把握、共有における様々な問題が浮き彫りになっている。
未知のウイルスとの闘いでは前例が通用しないため、ある程度の不手際があっても致し方ない。肝要なことは、ワクチンや治療薬ができるまで医療崩壊を防ぎつつ、国が一丸となって適切で効果的・効率的な各種対策を探り、スピードを持って実行していくことであろう。