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【薬剤師に伝えたい 獣医療の現在と未来】第1回 薬剤師、製薬業界の皆さん、はじめまして 獣医師・佐藤貴紀

2023年11月17日 (金)

愛犬の病気から獣医師に

 はじめまして。獣医師の佐藤貴紀と申します。

 今回、薬事日報さんからのリクエストをいただき、医療現場であまり接点がない「動物病院を取り巻く業界環境」や「薬剤師と獣医師の今とこれから」、「ヒト用医薬品と動物用医薬品のイノベーション」などについて考えていることを今後の連載で伝えていきたいと思っております。なぜなら、今後薬剤師さんが動物病院業界にも必要とされる時が遅かれ早かれくると考えているからです。

 私が獣医師を目指したのは愛犬の病気がきっかけです。

 中学生の頃、小学生のときに飼い始めたイヌがに急に歩けなくなる下半身麻痺の病気になってしまいました。

 動物病院に連れていき、入院をすることになったのですが病気の原因が分からず、回復しないまま退院することになりました。なぜ病院なのに治すことができないのか、治療を諦められた、とつらい思いをしたことを今でもはっきりと覚えています。

 それから自宅で愛犬を看病することとなり、後ろ足を必死でマッサージしてみると、少しずつですが歩けるようになる嬉しい経験をしました。愛犬の病気、獣医療の限界、看病を通じて治癒の可能性が見えたこと、こうした一連の経験によって「獣医師になりたい!」と考えるようになりました。

 その後、猛勉強の末、獣医学部に合格することができたわけですが、そこはあくまでもスタートライン。獣医学部の教育カリキュラムは、ウシやウマなど大動物の治療に関する勉強が7割を占める一方、イヌやネコの小動物の治療に関する項目は全体の3割に過ぎません。動物が好きで獣医師を志しても、大卒後にペットを対象とした都市部での動物病院ですぐに活躍することは難しいと考え、独学でイヌやネコの治療方法について勉強しました。

獣医療は専門化の方向へ

 獣医療の獣医師は1人の医師が、イヌやネコなどの哺乳類から鳥類、は虫類など様々な動物、さらには皮膚科や外科、循環器科など全ての科を診察するのが当たり前の世界ですが、現在は認定医や専門医の制度ができ、専門化の方向に徐々に進んでいます。

 中学生の頃、急に歩けなくなった愛犬の病名が分からず医療の限界を感じましたが、22歳のときに大学病院で専門医に診察してもらったところ、症状のみで椎間板ヘルニアであることが分かりました。初診では原因不明とされた病気にきちんと診断がついたことで、専門性を持つ必要性を肌で感じました。

 現在は全国で100人しかいない獣医循環器学会認定医として、主に循環器疾患を専門分野として治療に当たっています。

 大学卒業後は個人の動物病院で6年勤務医を経験し、30歳で白金高輪動物病院を開院しましたのち、40歳までに3つの動物病院を立ち上げました。

 ただ、3つの動物病院を運営していく中で、経営は順調ではあったものの、規模拡大の観点から会社の脆弱性、経営陣の方向性の相違などにより、会社の合併を決定しました。その後、新会社での取締役COOに就任し、組織拡大と会社運営の基盤の安定を図るためM&Aを実施し、40病院ほどまで合併を繰り返し、日本最大級の動物病院運営を行うこととなりました。獣医学部では獣医療は学べてもマーケティングやマネジメントなどの経営学については取り扱いません。独学での多面的経営に限界を感じ、病院経営及び院内マネジメントなどを学ぶため、病院経営の傍ら慶応義塾大学大学院経営管理研究科でMBA(2023年)を取得しました。高度医療からトータルケア、予防医療まで多様な機能を持つ動物病院をM&Aし、グループ化に取り組んだ経験は得るものが大きかったと考えています。

薬剤師が対ペット? タイミングは『もう少し先』

 現在は、ペットメディアなどを手がけるスタートアップ「(株)PETOKOTO」の取締役を務め、動物を健康にさせるペットフード開発やオンライン診療にもチャレンジしています。また、循環器認定医を生かし、動物病院での臨床を行い、さらにはオンラインにて診療も行っています。社会貢献などの事業にも興味があるため、東京都獣医師会の理事も兼任しています。

 さて、薬剤師が動物病院で当たり前に働くようになる日がいつ訪れるかという本題ですが、専門化へと進む獣医療において薬剤師のニーズは間違いなく存在すると考えています。一方で、そのタイミングが“今”であるかと聞かれると、「もう少し時間がかかるのではないか・・・」とも思います。

 そう考える理由については今後の連載でお伝えしたいと思っております。引き続きどうぞよろしくお願いします。

Profile

佐藤貴紀(さとうたかのり)

佐藤貴紀氏

1978年2月6日生まれ

2002年3月麻布大学獣医学部獣医学科卒業、同4月に西荻動物病院・上石神井動物病院勤務、07年3月にDogdays東京ミッドタウンクリニック副院長、08年5月にFORPETS設立、白金高輪動物病院開設などを経て、18年10月にJVCC動物病院グループ代表取締役、21年9月に株式会社VETICAL設立、VETICAL動物病院(往診専門)開設、同10月からPETOKOTO取締役。東京都獣医師会理事。The vet 南麻布動物病院において循環器科、栄養管理科にて診療を行う。

情報提供のお願い

獣医療にかかわる薬剤師さんからの情報やご意見をお待ちしております。

連絡先:henshu@yakuji.co.jp
※件名に「動物薬剤師」と記入して送信してください

目次



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