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【薬剤師に伝えたい 獣医療の現在と未来】第4回 動物病院における薬剤師ニーズは 獣医師・佐藤貴紀

2024年04月02日 (火)

職能発揮には少し時間が必要

 薬剤師が動物医療にかかわるニーズは間違いなくあると思います。動物病院で扱う薬は人で使われている医薬品を多く転用していますが、薬に関して十分な知識を持っているわけではありません。実際、薬剤師を雇っている動物病院は少なく、獣医師が目の前の動物の診療に当たりながら、院内で処方・調剤している現状があります。

 ペットの病態を見て薬を出しますが、多い場合は6~7種類の薬を出すこともありますし、必要に応じて減薬もします。頼りになる薬剤師さんが隣にいればどんなに心強いでしょう。私がかつて経営していた動物病院でも薬剤師サービスを始めようと検討していました。

 ただ、動物病院で薬剤師が当たり前に活躍するタイミングとして“少し早いのではないか”と思っています。

 そう考える理由として、国家資格として創設された愛玩動物看護師が担う業務が現場で十分に確立していない面にあると考えています。愛玩動物看護師が行う業務については獣医師の指示のもと行う“診療の補助”が業務独占業務と規定されています。

 制度がスタートしたばかりで、愛玩動物看護師が獣医療の現場でどんな業務を担うべきかが明確になるには一定の期間を要すると考えています。獣医師が担うべき仕事、愛玩動物看護師が担うべき仕事が明確になった後に、薬剤師が行うべき業務が見えてくると考えています。

動物病院専門薬局の動向に注目

 もう一つは、薬剤師を雇用できる動物病院が限られている問題です。いわゆる、1人獣医師の動物クリニックは約7割を占めており、愛玩動物看護師、さらに薬剤師も雇えるような経済的余裕がある動物病院が多くないように考えます。薬剤師を1人雇うのであれば、獣医師を1人雇う方が経営を考えると高い効果が見込めるとの指摘もあります。

 では、どんな薬剤師であれば雇用したいと考えるのでしょうか。「動物用医薬品の調剤を行える」「動物の病気や症状を理解し、ペットオーナーとコミュニケーションが取れる」「ペットオーナーにOTC薬を提案し、予防医療に貢献できる」「服薬指導が行える」「獣医師を積極的にサポートできる」という1人で何役もこなせる薬剤師であれば活躍できるでしょう。獣医療で薬剤師のロールモデルがないので先駆者となる薬剤師さんの登場に期待したいところです。

 一方、薬局機能では、最近になって動物病院専門薬局が登場してきました。獣医療でオンライン診療の普及が予測される中で、動物病院から調剤業務を受託し、薬のデリバリーまで担うという新たな業態は、「獣医師の業務負担軽減」「医薬品の在庫ロスを防ぐことができる」点で、特にグループ化した動物病院やオンライン診療に積極的な動物病院では連携するメリットが見込まれ、よい事業アイデアだと思います。

 ただ、前述した通り、売上全体の約3割に上る薬剤費・調剤料が重要な収益源になっています。様々なメリットはありますが、こうした収益源を手放して、調剤業務の外部委託に踏み切るかといえば難しい面もあり、今後の動向に注目していきたいです。

Profile

佐藤貴紀(さとうたかのり)

佐藤貴紀氏

1978年2月6日生まれ

2002年3月麻布大学獣医学部獣医学科卒業、同4月に西荻動物病院・上石神井動物病院勤務、07年3月にDogdays東京ミッドタウンクリニック副院長、08年5月にFORPETS設立、白金高輪動物病院開設などを経て、18年10月にJVCC動物病院グループ代表取締役、21年9月に株式会社VETICAL設立、VETICAL動物病院(往診専門)開設、同10月からPETOKOTO取締役。東京都獣医師会理事。The vet 南麻布動物病院において循環器科、栄養管理科にて診療を行う。

情報提供のお願い

獣医療にかかわる薬剤師さんからの情報やご意見をお待ちしております。

連絡先:henshu@yakuji.co.jp
※件名に「動物薬剤師」と記入して送信してください

目次



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