TOP > 寄稿 ∨ 

【薬剤師の実務に生かせるホスピタリティ】第1回 サービスとホスピタリティのちがい シュクリア代表・坪田のり子

2024年04月11日 (木)

はじめまして

 はじめまして
 薬剤師の坪田のり子です。

 調剤併設型ドラッグストアで17年、薬剤師として調剤や在宅、OTC販売、実務実習生の指導、行政と連携したお薬セミナーなど多岐にわたる業務をしてまいりました。

 ただ、最初からあれもこれも上手くできていたわけでなく、当初は全く自信がない薬剤師でした。薬剤師1年目、はじめての服薬指導は先輩の見よう見まねでこなし、何を話したか今でも思い出せません。2年目、在宅訪問に行き出したころ、初めて訪問する患者様宅の隣の家のチャイムを鳴らして別の家に入ろうとしてしまい、お叱りを受けるなどなかなか上手くいきませんでした。

 2年目の後半頃からでしょうか。「自信があるない関係ない、ただ目の前の患者さまの事だけを考えて接しよう」と考え、接していきました。患者さまの表情を見て、声に耳をかたむけ、分からなければ一緒に考える。そうやって1人ひとりの患者さまと真摯に向き合い始めると

 「またあなたに相談したい」
 「あなたに会えてよかった」
 「異動してもついていくわ」

 と言って頂ける患者さまが増えてきました。

 当時はまだ分かりませんでしたが真摯に向き合う姿はホスピタリティの精神であったなと感じます。

 医療DXが進む今こそ、選ばれる薬剤師になるスキルとして「人にしかできない」ホスピタリティ向上は重要だと考えています。

 計6回にわたり、薬剤師のみなさまにホスピタリティ向上をテーマにお話しします。

サービスとホスピタリティのちがい

 前置きが長くなりましたが、今回はサービスとホスピタリティの違いについてお話しします。

 両者とも「患者さまに対する接し方」という点は共通しています。ただアプローチが少し異なります。

 まず「service(サービス)」は「奉仕する」「仕える」などを意味する動詞「serve(サーブ)」の名詞形です。辞書には「物を直接作ったりするのではなく、生産者・消費者のために必要な便宜を提供すること」※1 と書かれています。

 つぎに「hospitality(ホスピタリティ)」は、ラテン語の客人の保護者を意味する「hospes」から派生しました。辞書によると「接客業で従業員が客に対して最善のサービスをしようとする気持ちや考え方」※2 と書かれています。私たち医療従事者は相手は客ではなく患者さまではありますが、最善のサービスをする気持ちや考え方は相手が患者さまでも同じだと考えています。

 つまりサービスでは、患者さまが求めるニーズや要望に対して、必要で的確な対応を行うことが重要視されます。医療サービスの向上という観点であると、「待ち時間を短くするための工夫」であったり、「処方箋受付から会計までの導線をスムーズにする」などが挙げられます。

 対してホスピタリティは、相手(患者さま)から求められなくても提供側(医療従事者)が
相手を想った上で自発的に行う行為と言われています。たとえば、「雨の日に傘で濡れた薬局の床を見て、足を滑らせないように床をふく」や、「どこに処方せんを渡せばいいか分からない表情をした患者さまに「『ここで受付をしております』と手をあげて教えて差し上げる」などが挙げられます。

医療ホスピタリティあふれる医療提供施設となる

 ホスピタリティは主体的に患者さまを想った上で行う行為のためマニュアルを作成しづらいです。ただ、医療ホスピタリティあふれる医療提供施設となることで、マニュアル化されたサービスでは生み出されない患者さまも医療従事者も「お互いに気持ちがいい」という心地よい空間が生み出されます。また専門的な知識を持っている薬剤師だからこそ、その専門性を患者さまに受け取って頂くためにはホスピタリティマインドを持っていることは大切だと痛感しています。

 今回は「サービスとホスピタリティのちがい」についてお話ししました。次回は「ホスピタリティは誰のために身につけるのか」についてお話しします。


※1 新明解 国語辞典 第八版
※2 新明解 国語辞典 第八版

Profile

坪田のり子(つぼたのりこ)
薬剤師/シュクリア代表

坪田のり子氏

東邦大学薬学部を卒業後、地域密着型の調剤併設型ドラッグストアに入社し、調剤、OTC販売、在宅医療、行政と連携したセミナーの開催、医療専門職への研修など多岐にわたる業務に従事。

入社2年目で新人研修・OTC各論の講師を抜擢され、その後も社内社外問わず、学生、医療専門職、一般の方などさまざまな対象者に対し研修を行う。参加者の立場にたった分かりやすい研修が、実践につながる、と好評を得る。

その実績が認められ社内初の調剤事業部課長として、新卒採用・教育研修の責任者となる。社内の研修の体制を整備し、内定から若手までの一貫した研修体制を構築することで、内定者離脱、離職者低減に寄与する。

退職後、独立し、「薬剤師の成長が薬局の成長につながる」を志に薬局業界を中心に人材育成事業を展開。学びで終わらせない、「実践へのこだわり」がつまった研修設計が好評である。

こんな活動をしています

「患者さまとの絆を深め、選ばれる薬剤師へ」を志に地域で活躍する薬剤師の育成に力を入れています。

シュクリア
https://shukriya-yaku.com/

目次



‐AD‐

同じカテゴリーの新着記事

薬剤師 求人・薬剤師 転職・薬剤師 募集はグッピー
HEADLINE NEWS
ヘルスデーニュース‐FDA関連‐
新薬・新製品情報
人事・組織
無季言
社説
企画
訃報
寄稿
新着記事
年月別 全記事一覧
アカウント・RSS
RSSRSS
お知らせ
薬学生向け情報
書籍・電子メディア
書籍 訂正・追加情報
製品・サービス等
薬事日報 NEWSmart
「剤形写真」「患者服薬指導説明文」データライセンス販売
FINE PHOTO DI/FINE PHOTO DI PLUS
新聞速効活用術