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【薬剤師の実務に生かせるホスピタリティ】第2回 ホスピタリティは誰のために身につけるのか シュクリア代表・坪田のり子

2024年05月10日 (金)

ホスピタリティは誰のために身につけるのか

 ホスピタリティは、患者さまとの良好な関係を築き、深い信頼を得るために欠かせない要素です。丁寧な言葉遣いや笑顔、迅速な対応は、患者さまに安心感を与え、医療機関への満足度を高めてくれます。

 しかし、ホスピタリティを身につけることは単に患者さまのためだけではありません。実は、自分のためでもあるのです。

 私の体験談を交えながら「自分のためにホスピタリティを身につける」というテーマについて深掘りしていきます。

はじめて訪れた薬局で感じた違和感

 先日、薬局に処方箋を持って行きました。初めて行く薬局でした。受付の事務の方はパソコン操作に集中しながら一言も目を合わせることなく「こちらです」とカタカタ。

 私が「くすりの在庫はありますか?」と処方箋を渡すと、事務の方は処方箋とパソコン画面を交互に見比べ、一言も発することなく調剤室へと消えていきました。私は、4歳の娘を宥めながらどうすればいいのか戸惑いました。3分ほど待ったでしょうか…事務の方が戻ってきて「薬はあります。初めてのご来局ですね。保険証をお持ちでしょうか?」と機械的に尋ねられました。その事務方の態度に、私も思わず無表情で保険証を渡してしまいました。薬を受け取り、薬局を後にしましたが、その機械的なやり取りがずっと心に残りました。

ホスピタリティがもたらす深い満足感

 もし私がその薬局の事務だったら、どんな接遇をするかと考えました。まず、患者様とアイコンタクトを取りながら「こんにちは」と声をかけます。そして「処方箋の受付はこちらです」と手を挙げて伝えます。「在庫を確認しますので、こちらのお席で2、3分お待ちいただけますでしょうか?」と声をかけ、患者様が安心して待てるように配慮します。

 在庫を確認できたら、患者様のもとへ行き、「お待たせしました。お薬の在庫がございますので、こちらで準備いたします」と伝えます。医療従事者の対応が機械的なものであれば、患者様の行動も無愛想なものになる可能性が高くなります。逆に、アイコンタクトや丁寧な言葉遣い、笑顔、細やかな気遣いを意識したホスピタリティ溢れる接遇は、患者様の表情を明るくする可能性を高めます。もしかしたら感謝の言葉を頂けるかもしれません。

ホスピタリティは心地よい職場環境を生み出す

 ホスピタリティを身につけることは、いらして頂いた患者さまのためでもありますが、自ら心地よい職場環境を作り出すためと考えることもできます。ホスピタリティを意識することで患者さまも一緒に働くスタッフも、そして自分も笑顔になれる温かい薬局を作ることができます。

 日々の業務に追われる医療機関の皆さまだからこそ心地よく働くためと考えてホスピタリティを意識してみるのはいかがでしょうか?

Profile

坪田のり子(つぼたのりこ)
薬剤師/シュクリア代表

坪田のり子氏

東邦大学薬学部を卒業後、地域密着型の調剤併設型ドラッグストアに入社し、調剤、OTC販売、在宅医療、行政と連携したセミナーの開催、医療専門職への研修など多岐にわたる業務に従事。

入社2年目で新人研修・OTC各論の講師を抜擢され、その後も社内社外問わず、学生、医療専門職、一般の方などさまざまな対象者に対し研修を行う。参加者の立場にたった分かりやすい研修が、実践につながる、と好評を得る。

その実績が認められ社内初の調剤事業部課長として、新卒採用・教育研修の責任者となる。社内の研修の体制を整備し、内定から若手までの一貫した研修体制を構築することで、内定者離脱、離職者低減に寄与する。

退職後、独立し、「薬剤師の成長が薬局の成長につながる」を志に薬局業界を中心に人材育成事業を展開。学びで終わらせない、「実践へのこだわり」がつまった研修設計が好評である。

こんな活動をしています

「患者さまとの絆を深め、選ばれる薬剤師へ」を志に地域で活躍する薬剤師の育成に力を入れています。

シュクリア
https://shukriya-yaku.com/

目次



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