日本医薬品卸売業連合会会長 宮田浩美
昨年5月に新型コロナウイルス感染症が5類へと移行され、人々の生活も平常化しつつある一方で、後発品の出荷調整や医療用解熱鎮痛薬等の限定出荷など、大変困難な状況が続いています。これまで医薬品は届くのが当たり前でしたが、それが難しい今の状況を踏まえますと、これまで以上に製薬企業や医療従事者、医薬品卸などの流通当事者間で情報を共有し、相互理解の上、改善を図りながら一体となってこの状況を乗り越えていかなければならないと考えています。
昨年6月には、有識者検討会の報告書がまとめられ、流通、薬価制度、産業構造等の課題について対応の方向性が示されました。薬価制度については、薬価の下支えをする仕組みの拡充が必要と考えており、中間年改定についても2016年の四大臣合意に立ち返って再度見直すなど、持続的な安定供給の基盤が構築されるよう対応していきます。
流通改善では、今年には厚生労働省から流通改善ガイドラインの改訂が行われる予定であり、銘柄別薬価収載の趣旨にそぐわない「総価取引」を是正し、「単品単価交渉」を徹底するなど、流通当事者としての自覚を持って取り組む所存です。
流通改善については、これまでの取り組みによって一定の改善は図られたものの、未だ抜本的な改善には至っておらず、一次売差マイナスや総価取引、未妥結・仮納入など過去からの様々な取引慣行が存在しています。
私たち医薬品卸は、今まさにコンプライアンスを徹底しつつ、過去からの「古い商習慣」を変えていく節目を迎えています。
今こそ各会員企業が自ら変わることが重要であり、自らを律し、自らの規範に則って行動する「自律」と、自らが他者に依存せずに行動する「自立」、この二つの「じりつ」が求められているのではないかと思っています。
その上で、流通改善に向けては流通当事者同士の相互理解が必要となります。互いに共感し、納得して行動に移すことで改善につなげていきたいと考えています。
時代が大きく変化する中にあっても、私たち医薬品卸の使命は平時でも有事でも医薬品を途絶えさせることなく、医療の一翼を担う者として、国民の安心・安全な医療に貢献していくことです。
「共感しないと行動に移せない」。この言葉は、私の信条であります。会員企業の皆様方と共感しながら「古い商習慣を変えること」にチャレンジしていきたい。そのことが、私たち医薬品卸業界が大きく変わっていける唯一の道筋だと思っています。