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【日本薬学会第144年会】薬学会賞受賞研究 病態形成に関わる生体機能因子の探索並びに機構の解析に基づく医薬品開発研究

2024年03月26日 (火)

岐阜薬科大学学長 原 英彰

原英彰氏

 開発研究として、中枢神経疾患および網膜疾患に関する病態解明ならびに治療薬開発の研究を基盤に、臨床開発・上市を目指してきた。これまで2種類の新薬(片頭痛治療薬、緑内障治療薬)を創生し、上市につなげることができた。基礎研究としては、諸種の遺伝子改変動物や臨床サンプルを用いて、中枢神経系および眼科系の病態形成に関わる生体機能因子の探求ならびに機構の解析を行ってきた。ヒトや動物由来細胞培養系およびヒト疾患iPS細胞を用いて病態を反映したinvitroの実験モデルを開発した。また、マウス、コモンマーモセットおよびカニクイザル等のinvivo各種動物病態モデルを確立した。

 特に、緑内障、網膜静脈閉塞症、萎縮型加齢黄斑変性、滲出型加齢黄斑変性の眼疾患モデルの確立を行い薬効評価や病態解明を行ってきた。さらに、脳卒中、精神疾患などの中枢疾患の病態解明および創薬研究を進めてきた(図1

図1

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 臨床への外挿性の高いカニクイザルを用いて慢性高眼圧モデルを確立し、網膜障害の臨床診断に用いられている画像診断装置および京都大学霊長類研究所と共同で開発した視野測定系を用いる実験モデルを確立した。さらに、陽電子放出断層撮影(PET)、光干渉断層撮影(SD-OCT)および磁気共鳴画像(MRI)を用いて、緑内障早期より網膜・視神経の変性に伴い、網膜から大脳視覚野の中継路である外側膝状体の変性、大脳視覚領域の脳代謝の低下および萎縮、加えて、それらを継ぐ視路に経シナプス変性が起こることを明らかにした(文部科学省分子イメージング研究プログラム)(図2

図2

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図3

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 カニクイザルを用いて緑内障(図3の左上図)、網膜静脈閉塞症(図3の右上図)および脈絡膜血管新生(図3の下図)の各モデルを確立した。これら実験技術は、医薬品開発業務受託機関(CRO)に技術移転し、国内外の製薬企業や研究機関等から多くの試験を受託している。

 Tissue kallikreinのVEGF切断作用、脈絡膜血管新生に対する小胞体ストレスや炎症の関与、Metallothionein 1/2およびApolipoprotein E2/E3の血管新生促進作用、Adiponectinの血管新生および血管透過性促進作用など、様々な血管新生制御因子の探索研究を進めてきた。また、カニクイザル(図3)に加えてマウスの滲出型加齢黄斑変性や網膜静脈閉塞症の各モデルを確立した。これらモデルを用いて、医薬基盤研究所と連携して細胞増殖因子HB-EGFを標的としたオリジナルの抗体医薬品の創成に成功し(AMED創薬総合支援事業)、現在ヒト化抗体を作製している。また、AMED拠点研究事業の支援により、Growth Differentiation Factor-15(GDF-15)が眼内の線維化形成に関与することを見出し特許を取得し、米国のベンチャー企業と共同でヒトに投与可能な抗GDF-15抗体の開発を進めている。

 脳梗塞研究においては、マウス中大脳動脈脳虚血モデルを開発した。この分野では本モデルが世界的に汎用されている。

 脳虚血後神経細胞死の機序にNOSが重要な役割を果たし、神経細胞のアポトーシスにCaspaseが関与していることを明らかにした。脳出血病態においては、細胞内鉄蓄積が原因となり誘発される酸化ストレスからBBBの構成成分である血管内皮細胞・ペリサイトを保護することで病態の増悪を防ぐことを明らかにした。さらに、細胞内鉄蓄積が原因となり誘発される酸化ストレスからBBBの構成成分である血管内皮細胞・ペリサイトを保護することで脳出血病態の増悪を防ぐことの重要性を明らかにした。



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