米FDA、進行・再発の進展型小細胞肺がんに二重特異性抗体タルラタマブを迅速承認

2024年05月22日 (水)

Photo Credit: Adobe Stock

 米食品医薬品局(FDA)は5月16日、プラチナ製剤を含む化学療法中またはその後に進行・再発した進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)の成人患者を適応として、二重特異性抗体Imdelltra(一般名tarlatamab-dlle、以下タルラタマブ)を迅速承認した。

 タルラタマブは、アムジェン社が開発した免疫療法薬。約85~96%のSCLC患者で腫瘍細胞の表面に発現していると言われるデルタ様リガンド3(DLL3)と、免疫系のT細胞の表面に発現するCD3の両方に結合するよう設計された二重特異性抗体である。T細胞とSCLC細胞との間に複合体を形成し、これによりT細胞を活性化させて腫瘍細胞を溶解させるという。

 今回の迅速承認は、アムジェン社の実施した第2相非盲検多施設共同多コホート試験であるDeLLphi-301試験の結果に基づき実施された。この試験によると、タルラタマブ10mgを2週ごとに投与された患者99人における客観的奏効率(ORR)は40%(95%信頼区間31~51%)、奏効期間(DOR)は9.7カ月(範囲2.7~20.7カ月超)だった。また、同社によると現行のES-SCLCのサードライン治療における全生存期間中央値(mOS)は4~5カ月だが、この試験に参加した患者のmOSは14.3カ月にも達したという。

 ただし、タルラタマブは重篤なサイトカイン放出症候群(CRS)や神経毒性を生じる可能性がある。CRSは免疫系が過剰に活性化されることで生じ、発熱や血圧低下、頻脈などの症状を呈し、生命を脅かす合併症を呈することもある。アムジェン社の安全性評価によると、タルラタマブを投与された患者の55%がCRSを経験し、その43%は初回投与後に生じている。

 この試験には関与していない米国立がん研究所の肺がん専門家であるAnish Thomas氏は、「このタイプの肺がんに対する実質的な治療法が何十年も進歩していなかった中で、タルラタマブが登場した。長い時を経た希望だと感じられる」と、New York Times誌にコメントしている。

 同誌によると、アムジェン社の試験に参加したES-SCLC患者は、既に化学療法を2回または3回受けており、タルラタマブを投与しない場合の平均余命は極めて短いと考えられた。試験に参加した患者らは、新たな人生の機会を得たと語っている。米ロードアイランド州に住む65歳のMartha Warren氏は昨年、SCLCと診断され、化学療法と免疫療法を受けた後も、がんはまだ急速に広がっていた。しかし、アムジェン社の試験に参加して薬剤の点滴を受け始めると、がんは縮小し始めたという。Warren氏は「がんになる前と同じくらい普通に過ごせている。この薬には多くの希望がある」と、同誌に語った。(HealthDay News 2024年5月17日)

Source
https://www.healthday.com/health-news/cancer/fda-approves-new-drug-for-deadly-lung-cancer

(参考情報)
FDA
https://www.fda.gov/drugs/resources-information-approved-drugs/fda-grants-accelerated-approval-tarlatamab-dlle-extensive-stage-small-cell-lung-cancer

Press Release – Amgen
https://www.amgen.com/newsroom/press-releases/2024/05/fda-approves-imdelltra-tarlatamabdlle-the-first-and-only-tcell-engager-therapy-for-the-treatment-of-extensivestage-small-cell-lung-cancer


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