再生医療等製品の条件・期限付き承認のアンジェスの重度慢性動脈閉塞症治療用「コラテジェン」、テルモの重症心不全治療用「ハートシート」が本承認にならない見通しだ。コラテジェンは本承認に向けた試験で有効性を確認できず、本承認申請をアンジェス自身が取り下げた。ハートシートは本承認への試験で有効性を示せなかった。
条件・期限付き承認の4製品中2製品がこの事態では、制度運用に疑問を抱かれかねない。制度の信頼を高めるには保険適用のあり方を含め透明性の高い制度運用が必要だ。コラテジェンについては、3日に行われた中央社会保険医療協議会で取り上げられた。支払側委員は、保険適用した経緯に触れ「医療保険制度を翻弄するもので極めて遺憾。(略)仮免許であっても薬価でしっかり評価を行っているので、薬事審査をしっかり行い、同様のケースがないよう求めたい」と指摘した。
承認時の「有効性の推定」、本承認に向けた試験計画、保険適用のあり方に疑問が投げかけられた格好だ。
再生医療関連制度は「再生医療推進法」(略称)に端を発し、同法では安全性確保の上で実用の迅速化が謳われている。医薬品医療機器等法では再生医療等製品について、その方針の下に設計され、限られた症例で短期間に「有効性の推定」により条件・期限付き承認を行える仕組みが導入された。
「有効性の推定」をめぐっては、制度発足当初から、どう推定するかに関して議論があった。内閣府の協議会は2021年、「ケースバイケースの対応がなされている」と指摘し、本承認まで見据えた条件・期限付き承認の「予見可能性の確保」を求めた。
それを受け厚生労働省は3月、条件・期限付き承認と本承認に向けた有効性評価計画ガイダンスを策定した。ケースによる柔軟対応の余地を残しつつ「有効性の推定」の判断には「達成基準を統計学的に設定できるかが重要になる」との考えを提示。本承認に向けた評価計画の留意事項として、▽症例数▽評価実施施設数▽評価項目の客観性――などを例示した。制度のスタートラインと言える内容だ。科学性と透明性の高い運用を求めたい。
他方、保険適用に検討の余地はないか。治療が高額なため患者のアクセス保障は必要だが、製造量や適正使用できる医療機関は限られるとはいえ、使用施設の少なさは国民皆保険の理念に沿うのか検討が必要ではないか。ハートシートは8施設、ニプロの脊髄損傷治療用「ステミラック」は11施設(投与可能施設)、第一三共の癌治療用ウイルス「デリタクト」は1施設である(「コラテジェン」非開示)
また、本承認にならないリスクを含む制度が通常の保険適用になじむのかどうか。再生医療への国民の期待は大きい。制度運用に科学性と透明性を担保し、制度と製品への信頼を高めたい。