第57回日本薬剤師会学術大会
座長
日本薬剤師会常務理事
富永孝治
埼玉県薬剤師会常務理事
根本昌子
新型コロナウイルス感染症の感染症法の位置付けは5類となり、学校には子供たちの笑顔と通常の生活が戻ってきたが、未だにコロナは感染拡大の波を繰り返し、この夏には第11波が流行している。
この分科会では4年以上にも及ぶコロナ禍によって生じた児童生徒らの健康問題と共に、児童生徒らを取り巻く新しい生活環境が変化する中で起こっている最近の心身の健康課題の解決に向けて協議する。児童生徒らは長引く感染拡大防止対策の中で運動不足による肥満やスクリーンタイムの増加による近視の増加、休校や学級閉鎖が続いたことによる生活習慣の乱れからくる登校拒否、マスク着用や黙食によるコミュニケーション不足等様々な心身への影響が懸念されている。
また、孤独・孤立化に伴う「生きづらさ」を訴える若者による大麻の乱用やオーバードーズ問題など自傷行為とも言える誘惑が児童生徒らに忍び寄って来ている。学校においては薬物乱用の一次予防としてくすり教育や薬物乱用防止教育などで正しい知識を伝え、断るスキルを身に付けさせることになるが、そこには医薬品の専門家である学校薬剤師の参画が必要で、児童生徒らには生涯を通じて薬物に関わらない健全な心身であることを求めたい。
さらには、昨今の健康志向ブームの高まりだけでなく、学習能力やスポーツ能力の向上のためにサプリメントを摂取している生徒らが散見される。ところが、機能性表示食品による健康被害事件で浮き彫りになったいわゆる健康食品への過度の期待や、熱中症予防のための経口補水液の誤用等についても、家族を含めた児童生徒らへの薬剤師による指導助言が求められている。
このような新しい健康教育に加えて、従来から課題とされている「がん教育」についても学校薬剤師は積極的に関わっていきたい。学校薬剤師はコロナ禍で発揮した学校環境衛生活動による感染防止対策だけでなく、児童生徒らの今と未来を守る健康教育に力を発揮したい。
(富永孝治)