1年で最も寒さが厳しいとされる大寒も過ぎた。インフルエンザの流行も拡大しており、ワクチン、検査薬、治療薬などの関連製品の需給が懸念されている。一部のインフルエンザ治療薬は限定出荷、供給調整を余儀なくされている。インフルエンザに限らず、新型コロナウイルス感染症、マイコプラズマ肺炎など、各種感染症の拡大期には当該医薬品等の供給網が逼迫することは毎度の事態だが、業界の製配販が一丸となって患者に不利益がないように取り組みを進めているところだ。
医薬品等の有事安定供給においては、感染症流行のほかに災害発生時の供給体制の確保が求められている。地震などの災害発生時には、生存者救出が最優先だが、次いで被災者への飲料水、食糧の提供が必要となる。患者や負傷者の命を救う医薬品供給も同レベルで優先される。
17日には1995年の阪神・淡路大震災から30年となった。30年追悼式典には天皇皇后両陛下が出席した。天皇陛下は、「阪神・淡路大震災から30年を経て、震災を経験していない世代の人々が増えています。兵庫県では震災を風化させてはならないという決意のもと、世代や地域を越えて経験と教訓をつなぐ取り組みを進めており、中でも震災を経験していない若い人たちが震災について自主的に学び、考え、自分の言葉で発信し、次世代へつないでいこうとする活動に取り組んでいると聞き、心強く思います」(宮内庁公表より抜粋)と、甚大な被害によって得られた貴重な経験・教訓と記憶を次世代へ継承していく活動に注目し賛辞を贈られた。
30年前に発生した阪神・淡路大震災の被災状況や医療現場での医薬品供給の実体験に関して、本紙17日号で紹介している。メディパルホールディングスの長福恭弘副社長は当時、神戸に本社があった三星堂で病院担当営業を担っていた。発災時の的確な対応を模索しながらも献身的に実働したことはさすがだと感じた。未曾有の災害でそれまでの常識が通用しない事態にも遭遇したが、そこでも後につながるいろいろなことを学んだと振り返る。
有事の安定供給には、自らが被災者となろうが、「何があっても医薬品を必ず届ける」という卸各社社員の強い意志が原動力であることは論を待たない。
その後も震度7クラスの大地震が相次いだ。2011年3月11日には東日本大震災が発生。16年4月14日には熊本地震、さらに昨年1月1日には能登半島地震が発生したが、医薬品供給面では積み重ねた教訓、培ったノウハウが奏功して以前のような混乱は少なくなった。
災害大国・日本では、今後想定されている南海トラフ地震、首都直下地震という激甚災害が襲ってきた時、可能な限り減災できるインフラ、システム、活動体制を整えておく必要がある。これまでの教訓を風化させてはならない。