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後発品供給支援基金の行方は

2025年01月31日 (金)

 インフルエンザ流行の影響で、抗インフルエンザウイルス薬「タミフル」の後発品を製造するメーカーが一時供給停止を発表した。保険薬局では、後発品の在庫不足などから先発品で対応するような動きも見られ、国が推進する後発品使用促進策とは矛盾する様相を呈した。

 昨年10月から選定療養費制度が導入される中でも供給不安は継続し、薬局からは「先発品しか入ってこない品目も増えている」との声も聞かれる。各メーカーが出荷調整を行う品目は、前年度の卸企業への納入実績に基づく割当出荷が実施され、流通上、地域や施設間での偏在が発生していることも要因の一つとなっている。

 地域の薬局間では分譲によって融通する動きも見られるが、抗インフルエンザ薬など比較的緊急性のある薬剤の場合は、在庫がないと対応に苦慮するところだろう。今冬、去痰成分のカルボシステインなどについては、医療用医薬品の在庫はないものの、一般用医薬品であれば在庫が存在するという現象も店頭で起きた。

 日本製薬団体連合会と厚生労働省が実施している医療用医薬品供給情報緊急調査事業によると、昨年12月は調査対象の全医療用医薬品1万7447品目のうち2割程度が限定出荷や供給停止という状況にあり、このうち後発品の占める割合が多いことも判明している。

 直近のデータでは、限定出荷・供給停止の割合も少し改善傾向が見られるものの、依然として医療機関や薬局に大きな負担がかかっているのが現状のようだ。

 後発品メーカーは、少量多品目生産という効率が良いとは言えない製造方法を取る企業が少なくない。このため、生産上のトラブルも起きやすい。近年、医薬品医療機器等法違反事案の発生により生産が停止し、必然的に供給量も減少した。これを契機に、市場で供給不安が発生するという事態に陥っている。

 厚労省は、後発品メーカーが構造的な問題を解決し、品質の確保された医薬品を安定的に供給できるような環境整備として、医薬品安定供給支援補助金(医薬品安定供給体制緊急整備事業)を2023年度に引き続き、24年度補正予算で70億円を計上した。

 また25年度予算案では、後発品の安定供給実現に向け、少量多品目生産の非効率的な生産体制を解消し、計画的な生産性向上に取り組む後発品メーカーを支援するため、医薬基盤・健康・栄養研究所に後発品供給支援基金(5年)を造成することが盛り込まれた。

 基金の詳細は、今通常国会での薬機法改正などの措置を講じた上で決められることになるが、国が継続的に支援することにより、5年程度の集中改革期間の中で構造改革を強力に進めていく考えを示している。後発品メーカーのあるべき姿の実現が早急に達成されることを期待したい。



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