日本医療研究開発機構(AMDO)革新的医療技術創出拠点である名古屋大学と岡山大学、順天堂大学は24日、3大学共同で提案した「豊かな人生を育む多世代共生・健康社会を目指す医学研究者育成プログラム」が、今年度の文部科学省・AMDO「医学系研究支援プログラム」(特殊型)に採択されたと公表した。3大学の事業では、▽強固な共同研究体制の構築▽特定重要分野の研究を加速▽AI・医療ビッグデータの戦略的活用によるデータ駆動型研究の推進▽研究に没頭できる抜本的環境改革――に取り組んでいく。実施期間は10月1日から2028年3月31日までを予定している。
3大学事業は、少子・超高齢社会のわが国の喫緊の課題を対し、全ての人が健康に活躍できる社会基盤の構築を目指す。関東、中部、中国・四国でそれぞれ中核的な医療・医学研究を担ってきた3大学が、それぞれの強みを生かして共同し、若手医学研究者が萌芽的・挑戦的な研究に専念できる環境を抜本的に整備していく。
また、経験豊富な研究者と臨床医が一体となって若手をサポートする新たな体制を構築し、わが国の医学研究や産学連携の未来を切り拓くロールモデルとなることを目指していく。
「共同研究体制の構築」では、強固な研究基盤を生かし、3大学が共通して注力する5重点領域(精神・神経変性疾患、老化、癌と腫瘍微小環境、腎疾患、小児疾患)で、大学や専門分野の垣根を越えた「研究者クラスター」を形成する。これにより、従来の発想にとらわれない柔軟なチームが生まれ、独創的な研究が創出される土壌を育んでいく。
「特定重要分野の研究力強化」では、私立大特有の機動力を国公立大学の研究推進体制に融合させることで、大きな相乗効果を生み出すことを目指す。国立大の安定した研究基盤と、私立大の戦略的な資源集中という、お互いの利点を最大限に活用し、わが国の研究力を新たな高みへと引き上げていく。
「データ駆動型研究の加速」では、これまで3大学がそれぞれ育成してきたAI医療人材が連携し、各研究プロジェクトを横断的に支援する。さらに、3大学が既に導入している臨床データ共同利活用システム「SIMPRESEARCH」を通じ、各大学病院が持つ膨大な医療ビッグデータを安全に共有・解析できる基盤を構築することで、地域特性を超えたバイアスの少ない大規模なリアルワールドデータ解析が可能となる。
また、各大学に「データサイエンス・AI解析のワンストップ窓口」を設置し、AI研究の専門家がOn-the-Job Trainingを兼ねて各研究室に伴走することで、データ駆動型の新しいアプローチを研究現場に浸透させ、研究の質とスピードを飛躍的に高めていく。
「抜本的環境改革」では、若手研究者が臨床や事務作業に追われることなく、創造的な研究活動に集中できる時間を確保するため、各大学の特色を活かした抜本的な環境改革を実施していく。
名古屋大では、研究補助員として学部生を雇用する「Student Assistant制度」を大幅に拡充し、研究者の定型作業を軽減すると同時に学生の研究マインドを涵養していく。
また、岡山大では臨床研究の書類作成等を代行する専門事務員を雇用する「リサーチクラーク制度」を拡充して医師のタスクシフトを推進するほか、新技術の事業化やスタートアップ創業を支援する専門人材を確保し、研究者が研究に専念しながらスムーズに社会実装を目指せる環境を整えていく。
順天堂大でも、医師の臨床業務の一部を担う診療看護師を戦略的に配置し、臨床研究に携わる医師の負担を大幅に軽減する。文科省のダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ事業とも連携し、URAをはじめとする高度スキル人材や技術員等の研究支援人材を確保・配備することで、研究者が所属する組織全体の研究環境向上につなげていく。
これらの大学ごとの取り組みに加え、3大学共通で、各研究者が特定の期間、業務から完全に離れて、研究や論文執筆、研究成果の社会実装に向けた準備等に集中できる「ミニサバティカル制度」の導入も図り、研究者の創造性を最大限に引き出していく。
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