【中谷財団】第3回神戸賞授賞式

2026年06月03日 (水)
受賞者集合写真:左から竹岡氏、川口氏、宮脇氏、藤枝氏

受賞者集合写真:左から竹岡氏、川口氏、宮脇氏、藤枝氏

 公益財団法人中谷財団は5月31日、兵庫県神戸市の神戸ポートピアホテルで、第3回神戸賞授賞式を開催した。大賞受賞者の宮脇敦史氏、Young Investigator賞(Y.I.賞)受賞者の川口喬吾氏、藤枝俊宣氏、竹岡彩氏に賞金および副賞が授与された。授賞研究の内容もあわせて紹介され、BME分野で独創的な研究に取り組む研究者を顕彰する場となった。

Introduction

 神戸賞は、中谷財団が財団設立40周年を記念して創設した学術賞。生命科学と理工学の融合境界領域であるBME(Bio Medical Engineering)分野において、イノベーションをもたらす独創的な研究で実績を上げた研究者や、ユニークな研究で将来性が嘱望される若手研究者を表彰する、「独創に光を」掲げる賞だ。大賞受賞者には賞金5000万円と副賞のトロフィーが、Y.I.賞受賞者には賞金500万円と副賞の研究助成金4000万円(5年間)、トロフィーが贈られる。

 第3回神戸賞は4月に発表されたとおり、大賞に宮脇敦史氏(理化学研究所脳神経科学研究センター細胞機能探索技術研究チームチームディレクター)の「光と生命との相互作用の探究から革新するバイオイメージング」が、Y.I.賞に川口喬吾氏(理化学研究所開拓研究所主任研究員)の「トポロジカルな細胞動態の発見に始まる生命の階層横断的物理学の開拓」、藤枝俊宣氏(東京科学大学生命理工学院教授)の「プリンテッドエレクトロニクスによる高分子薄膜の機能化と生体融合型デバイスの創製」、竹岡彩氏(理化学研究所脳神経科学研究センターチームディレクター)の「脊髄回路を介した感覚運動変換と運動記憶形成の神経基盤の解明」が選ばれている。

 式典はジャズ演奏家・広瀬未来氏によるトランペット演奏と、書道家・木下真理子氏による「独創に光を。」の揮毫パフォーマンスで幕を開けた。続いて、財団理事長の矢富裕氏が、神戸大学と神戸医療産業都市推進機構理化学研究所による展示と、中高生によるポスターセッションを新たに設けたと紹介し、「この経験が次代を担う未来の科学者たちの志を育む第一歩となることを願っている」などと述べた。次いで兵庫県知事、神戸商工会議所会頭、神戸大学理事・副学長、京都大学理事・副学長、大阪大学理事・副学長、神戸市長らの来賓紹介が行われ、このうち神戸市長の久元喜造氏があいさつに立ち、「神戸の名を冠した賞がこのように創設されたこと、そして生命科学や理工学の境界領域分野に焦点が当てられていることは、神戸医療産業都市を展開している神戸市にとって大変光栄なこと」などと述べた。

Y.I.賞:川口氏、藤枝氏、竹岡氏

 続いてY.I.賞の授賞式に移り、まず川口氏が矢富理事長から表彰状と賞金、トロフィーを受け取った。初回の神戸賞からアンバサダーを務める神戸出身のタレント山之内すず氏が「川口さんはポケモンから始まった生き物への興味が現在の研究に繋がっていると伺いました」と尋ねると、川口氏は「小学生のときにポケットモンスターというゲームに出会い、それに夢中になり、なぜこんなに面白いのだろうと考えているうちにいつの間にか研究者になっていました。多くの方々に支えられて、このような素晴らしい賞をいただくことができて、本当に感謝しています」と答えた。そして最後に、カメラの画面にマジックでサインをするという神戸賞受賞者の恒例になったパフォーマンスを披露した。

 二人目に登壇したのは藤枝氏。ラグビー好きだという藤枝氏は、山之内氏から「ラグビーのチームワークが研究を進める上でも大切な力になっていると伺いました」とマイクを向けられると、「大事なことは、ラグビーから学んだことが結構多い。ラグビーというのは難しい競技で、一人一人では勝てないが、集団の力で勝てることがあります。同じように、医療・ヘルスケアでは難しい疾患に対して、一つの分野では対応できなくても、いろいろな人たちが協力して立ち向かえることがある。その点を評価していただけたことが非常に嬉しい」と答えた。

 三人目は竹岡氏。山之内氏から「サルサダンスを楽しまれていた経験も竹岡さんらしい運動への眼差しにつながっているのでは」とマイクを向けられると、「サルサは、研究が少し忙しくなりすぎたこともありやめてしまったのですが、今でもたまに踊ると、体が覚えています。踊りながら、こういうふうに神経が覚えているのだなと実感しました」と答えた。

大賞:宮脇氏

 大賞は、Y.I.賞のように理事長からではなく、前回の大賞受賞者である菅裕明氏(東京大学大学院理学系研究科教授)から宮脇氏に授与された。

 まず山之内氏が、「宮脇さんは文学や随筆から、物を見る角度の面白さを感じられたと伺いました」と尋ねると、「高校時代に、日本人の科学者が書いた随筆などを非常に親しみを持って読んでいた。我々日本人は、独特な自然観を持っている。自然に対する恐れや愛情を持っている。これは日本人の強みでもあり、弱みでもある。今回、日本のサイエンスを元気にするという趣旨の賞を私がいただけたことに心から感謝しています」と述べた。

 また、菅氏が「私は先生の研究の大ファンです。まさに“独創に光を”を体現されている研究だと思います。蛍光タンパク質から、環境によって色が変わるタンパク質まで、本当に独創的な研究をされてきました。心から尊敬しております。本当におめでとうございます」と述べた。

 これに対して宮脇氏は、「私は、菅先生の大々ファンであります」と切り返すと、会場から笑いが起こった。そして宮脇氏は「先生のスケールの大きなサイエンスに深い敬意を抱いております。こうして直接トロフィーを手渡していただき、本当に感無量です」と続けた。

 授賞式後半は、Y.I.賞、大賞受賞者による講演が行われた。この中で宮脇氏は、「私はよく若い研究者の方々にこういう言葉をかけるんです――ぜひ現時点でその世界にはびこる常識とか標準のいくつかはくだらないと思っていただきたい」「損得なしに夢中になれるものを、若いときに見つけていただきたい。そのためにはある程度の失敗が必要で、失敗を恐れてはいけない。安易な成功に甘んじるのではなくて常に挑戦をしていただきたいと思いますし、実際のところ、成功と失敗の間の境界というのは非常にわかりにくい」と若手研究者に呼びかけた。また、「自然を敬う科学者のみが自然を超えることができる」と自身の研究対象でもある“自然”への感謝を独特な表現で示すとともに、関係者全ての人への感謝を述べて講演を締めくくった。

左から山之内氏、川口氏

左から山之内氏、川口氏

竹岡氏のサインパフォーマンス

竹岡氏のサインパフォーマンス

左から山之内氏、宮脇氏、菅氏

左から山之内氏、宮脇氏、菅氏

第4回神戸賞募集開始

 第4回神戸賞の募集が6月1日(月)~7月31日(金)まで行われている。候補資格と研究対象分野は、大賞、Y.I.賞ともに日本人研究者(海外で活躍する日本人研究者を含む)であって、BME分野の医療や人々の健康に貢献しうる独創的でイノベーティブなアプロ―チを行う研究をなどが対象。詳しくは財団のウェブサイトを参照。

 https://www.kobe-prize.jp/recruitment/

中谷財団のこと

 中谷財団は、シスメックス株式会社の創業者故・中谷太郎氏が私財を投じて1984年に設立した財団。医工計測技術分野の発展を願い、表彰事業や長期大型研究助成をはじめとした研究助成のほか、交流事業、大学院生向け奨学金、大学生の短期留学支援、小中高校生の理科・科学教育の振興事業を通じ、若手人材の育成と研究者の裾野拡大を図っている。2024年に財団設立40周年を迎え、助成分野をBME分野に広げるとともに、新たな表彰事業「神戸賞」を新設した。


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     E-mail:kawabe_s@yakuji.co.jp
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