筑波大学病院は23日、加齢に伴って血液細胞に生じる遺伝子変化である「クローン性造血(Clonal Hematopoiesis:CHIP)」に着目し、その実態解明と健康への影響を明らかにすることを目的に、「クローン性造血外来」を開設したと発表した。京都大学は、同外来における研究・診療活動に協力機関として参画する。
CHIPは加齢とともに陽性率が上昇し、40歳未満では1%未満だが、60歳代で約10%、70歳以降では15~20%程度とされており、日本の高齢化社会においては非常に多数の陽性者がいると考えられている。近年の研究によって、CHIPは血液疾患の発症リスクだけでなく、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞などの心血管疾患とも関連する可能性が報告されており、世界的に注目を集めている。
欧米の主要ながんセンターでは、既にクローン性造血外来が創設されており、CHIPを標的とした医療の展開が始まっている一方で、国内で体系的に実施している病院は筑波大病院が初であり、先進的な取り組みといえる。同院のクローン性造血外来は、こうした次世代の予防医療の実現を見据え、人間ドックと連携しながらCHIPの早期発見とリスク評価を行う新たな医療モデルの構築を目指している。
同外来では、同意取得が得られたつくば予防医学研究センターの人間ドック受診者を対象に末梢血採取を行い、CHIPの有無を解析する。CHIP陽性の場合は、1年後および2年後に問診もしくは専門外来受診を行うこととし、この時の聴取や診察を通して、心血管系疾患の新規発症有無の兆候をいち早く捉える。同外来では、循環器科と連携したフォローアップにより、予防的介入として生活習慣指導、薬物療法、臨床試験参加などを適切に導入するという流れとなる。
また同外来では、筑波大病院が人間ドックと連携した同意取得、採血、臨床情報の収集、ならびに専門外来でのフォローアップを担う。京大大学院医学研究科腫瘍生物学講座は、末梢血DNAを用いたクローン性造血関連遺伝子の変異解析を担当する。
京大腫瘍生物学講座では、造血器腫瘍やクローン性造血に関する大規模な遺伝子解析を継続的に実施してきている。今回の共同研究では、こうした解析基盤を活用して、クローン性造血の有無や関連遺伝子の特徴を評価し、筑波大病院で得られる臨床情報およびフォローアップ情報と統合することで、疾患リスク評価のための基盤構築を目指していく。
今回解析のターゲットとなる、DNMT3A、TET2、ASXL1、JAK2、CBL、SF3B1、SRSF2、U2AF1の8遺伝子の変異は、血液系疾患、炎症性疾患や心血管疾患など全身疾患への関与が示唆されている。そのため、血液腫瘍領域だけでなく、循環器内科・予防医療の観点からも重要で、多職種連携による包括的マネジメントが不可欠であり、その受け皿として同外来が必要となる。
今回の研究を通じ、発症してから治療する従来の枠組みから、「発症を防ぐ医療」へシフトするための基盤となることが期待される。
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