英市場調査機関のデータモニターは、新薬メーカーが市場シェアの損失を遅らせる方法として、自社製品のジェネリック薬(GE薬)版を販売するため、「承認済みGE薬契約」をする方法が、ライフサイクルマネジメント戦略の最終兵器として、欧米製薬企業で増加するとの予測を発表した。特に心血管疾患薬、感染症薬など、収益性の高いブロックバスターの保護を目的に、承認済みGE薬を上市していると指摘した。
承認済みGE薬契約は、GE薬による自社ブランド製品のシェア低下をカバーして、成熟した製品から得られる収益を最大化するための一つの手段となっている。新薬メーカーにとっては、GE薬メーカーと提携することで、特許失効後も自社製品のGE薬を販売するという、究極のライフサイクルマネジメント戦略でもある。
特に米国では、最初に申請したGE薬メーカーに、180日間の市場独占権が与えられるため、「米国市場での承認済みジェネリック契約の効果は極めて強力」と分析。新薬メーカーにとって有用な手段になっている。その上で、独占期間が、市場競争を抑制し、早期のGE薬参入を妨げているとの意見もあるが、「独占期間の間に、価格低下に拍車がかかることを考えれば、短期的に販売禁止になる確率が低くなる」と、メリットもあるとした。
新薬メーカーは、GE薬メーカーと提携して、承認済みGE薬契約を結ぶことで、自社製品のGE薬販売収益を全て確保することができる。データモニター医療戦略アナリストのパム・ナラン氏は、「承認済みGE薬を販売しようとする新薬メーカーにとって、自社製品のGE薬は最良の選択肢」とコメントしている。
同社の調査によると、2004~08年までに米国で上市された承認済みGE薬のうち、新薬メーカーの自社製品GE薬は45%を占めていることが分かった。GE薬上市で最も多かったのは、米国GE薬の売上トップ3を占める心血管疾患、感染症、中枢神経系領域で、承認済みGE薬の上市は、新薬メーカーが最も収益性の高いブロックバスターを、保護する目的であることが鮮明になった。
ただ、新薬の減少、GE薬参入の遅延は、競争力の低下が懸念される。実際、こうした新薬メーカーのなりふり構わぬ手法に対し、欧米の規制当局は監視を強化しているとされるが、ナラン氏は「承認済みGE薬の問題が徹底して監視されるようになったが、その競争抑止性に関しては、未だ最終的な結論は出ていない」とし、「当面の間、新薬メーカーとGE薬メーカーの争いの種であり続けるだろう」との見通しを示している。