日本製薬医学会(JAPhMed)は、既承認薬を用いた自主臨床研究の推進に向けた「臨床研究に関する提言」をまとめ、発表した。提言では、基礎研究偏重の医学教育が、被験者と金銭授受に関わる倫理意識を妨げてきたと指摘。臨床研究の方法論を医学教育カリキュラムに導入すると共に、利益相反の観点から、社会に情報公開する重要性を認識するよう研究者などに求めた。一方、奨学寄付金の形で資金提供を行ってきた製薬企業に対しては、利益相反の透明化を推進するため、覚書・契約書で臨床研究の経済的支援を行うことを提言した。
4月1日に、改正「臨床研究に関する倫理指針」が施行され、研究者と実施医療機関の責務が強化された。ただ、依然として臨床研究の重要性が理解されているとは言えず、組織的に支援する体制も不十分なのが現状だ。こうした状況について、提言では「基礎研究偏重の教育が、臨床医の臨床研究に対する意識、特に倫理的な側面に対する十分な理解を妨げてきた原因の一つとなってきた可能性がある」と指摘。被験者と金銭授受に関わる倫理面の、二つの倫理意識の活性化が重要とした。
そのためには、臨床研究に関わる医師などの人材育成が重要とし、「医学部での学生教育、大学病院での卒後研修過程においては、治験、臨床研究の技術習得が義務化されなければならない」と要求。「臨床科に属する医師の研究主体を、基礎研究から臨床研究にシフトし、医師の評価には治験、臨床研究における業績をより重視すべき」と提言した。ただ、自主研究と称する目的が特定されない観察研究を計画し、製薬企業に支援を要求することは、慎まなければならないとも忠告した。
一方、最近は、製薬企業が研究者に提供する奨学寄付金と利益相反の問題が浮上している。実際に、臨床研究支援の枠組みの多くを占める奨学寄付金の透明性は高いとは言えず、使途や明細が企業に報告されることはほとんどないのが現状とされる。
そこで、提言では「製薬企業からの奨学寄付金を用いた臨床研究では、研究内容が必ずしも明らかにされず、販促が目的と見られる可能性があり、利益相反も懸念される」とした上で、「企業と医師、医療機関との関係を透明性を持ったものにすべく、覚書または契約書で臨床研究の経済的支援を行うこと」を提案した。